追走列車でゆく
皆が、デジヴァイスに向かって自身の闘士に話しかけていた。そうだ……シキモンは、このデジヴァイスのなかにいる。でも、わたしはそんなことをする気になれなかった。それは純平さんも同じだった。[1/2] チキチキ! トレイルモン猛レース わたしは、静かにデジヴァイスを見つめる。 友樹くんがブリザーモンになった。……これでわたし以外のみんながビーストスピリットを手に入れた、ということになってしまった。 『君が色のスピリットを統一するのだよ。善と悪が、一つになるように』 ――と、デュークモンさんが言っていたように、わたしもビーストスピリットを得たほうがいいんだろう。でも、色のビーストデジモンは既に悪の闘士として存在している。 この状態が続けば、みんなとわたしとの力の差が広がっていく一方だ。……やっぱり、わたしも戦わなくちゃいけない、ビーストスピリットを手に入れなくちゃいけない。 ハクジャモンを倒してスピリットを手に入れるのが少し怖い――なんてのは偽善だろう。 あれから皆にデュークモンさんとアメノミモンについて話したけど、ボコモンさえもアメノミモンについて詳しくは知らなかった。 わたしが悩んでいても、トレイルモンは先を目指して進んでいく。夜に乗った電車なのに、気付けばもう朝になっていた。 ―― 「降りるんだー」 一つの街に着いて、いきなりトレイルモンに吐き出される。え、トレイルモン働きなよ……! 「ここで降りてどうすんだよ」 「あたしたち、バラの明星に行きたいのよ」 「今日は年に一度のシュッポー祭だー!! がんばるぞおー!!」 ……シュッポー祭、って何。 * 街はどこを歩いてもお祭りムードで、沢山のデジモンさんたちが楽しそうにはしゃいでいた。 しばらく歩くと、人、いや、デジモンだかりが見えた。デジモンさんたちの間をかいくぐって、集まりの中心を見る。そこには、トレイルモンが並んでいた。 「トレイルモンたちの、名誉を賭けたレースなんだ。乗る者とのパートナーシップが必要なんだ」 近くにいたカカシのようなデジモンさんが、教えてくれる。トレイルモンたちは、パートナーの募集を呼びかけていた。 「商品はないの?」 「ハンバーガー……」 「はい、はーい!」 最後まで言い切ってないのに、挙手してトレイルモンの元へ走る泉ちゃん。なんかもう大食い大会に参加してから、だいぶキャラが変わったような気が……。 泉ちゃんがパートナー候補としてトレイルモンに近寄るけど、黒いワーガルルモンというデジモン、ドッグモンというデジモンがパートナー候補を名乗り出す。 「パートナーがあんたらで助かったぜ。人間なんかに乗られちゃたまんねえからな」 「まあ、失礼しちゃうわね!」 今まではそうでもなかったけれど、人間を嫌がるデジモンもいるんだな。というか、わざわざそんなことを口に出すトレイルモンは、ちょっとどうかと思う。 ワーガルルモンが参戦したことにより、他にパートナーとして乗ろうとしていたデジモンさんたちは皆退けていく。 「ええ、棄権するの!?」 「なら、あたしが乗るわ!」 泉ちゃん、勇気あるなあ。勇気あるなあ。泉ちゃんが手を挙げたことにより、当然のように純平さんも参戦。まあ、わたしは出たくないし二人の応援をしてよう。他のみんなは出ないよね……? 「面白そうだから、オレも!」 ……って、拓也くん。……これ、わたしも参戦しなきゃいけない流れじゃない!? ふと横に目をやれば、既にパートナーが決まっている輝二くん友樹くん。何故か参加するネーモン。え、え、え。 「想も参加しなさいよ!」 「いいいいやいやいやトレイルモン余ってないし!」 うん、トレイルモン全員にもうパートナー決まってるから! わたし入り込む余地ないから! コワいし! 「……想」 「こ、こーじくん!」 輝二くんはわたしを静かに見ている。なんか無言の圧力で一緒に乗れとか言われてるような気がしなくもないんですが絶対こわいですいやです。 「想、大丈夫だ」 「何でちょっとどや顔なの……!」 確かに輝二くんいたら安心するけどそういうことじゃないよ、何かおかしいよ。というか輝二くん無表情でそういうこと言うからびっくりするよ。 結局、輝二くんに無理やり引っ張られてわたしは乗車することになってしまった。 NOVEL TOP ×
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