ノイズに変わって奪われる
わたしたちは月にいた。第三の月。黄金色に輝く、月。[1/4] ロイヤルナイツ散る そして…!! 世界が消滅しているということでなければ、ため息が出そうなくらい美しい景色だった。 ーー最後の地で、待っている。デュークモンさんの言葉を思い出す。 もうデジタルワールドは消滅してしまった。それなのに、最後の地って、一体なんだったのだろう。デジタルワールドが消えた今、デュークモンさんを思い出すのはとてもつらかった。 「綺麗な景色よね」 「ああ、天国みたいだ!」 「……よしてくれ! 俺たち、死んだみたいじゃないか」 「……ご、ごめん」 素直な感想を漏らした純平さんに、輝二くんが言った。死んだ、そんな言葉にわたしはどうしても過剰に反応してしまう。 輝一くんの表情が、僅かに歪む。いちばん苦しいのは輝一くんだけれど、わたしも胸が締め付けられた気持ちになった。 「デジタルワールド……消えちゃったね」 「ああ、もう終わりか」 「……まだまだ! まだ、オレたちはこうして生きていて、戦える力もある!!」 拓也くんは拳を握りしめた。 「なんとかするさ、その、なんとか、はこれから考えるけど……」 「なんとかしようにもデジタルワールドはもうないんだぜ!」 「護るべきものがなくなった今、あたしたちどうすればいいのか……!」 「まだ、デジモンたちがいるじゃないか!!」 輝二くんはそう言ってデジヴァイスを掲げた。 その言葉に、皆は顔を上げた。でも、不安げだった。 わたしは、何も言えなかった。この世界が終わりだと言いたくもない。けれど、確実にこの世界が救われる、なんて言える自信もない。 拓也くんは、自分のデジヴァイスのアグニモンに語りかける。ーーオレ、間違っているか? 間違っていない。拓也くんは、正しい。間違っているのは、ルーチェモンだ。 * 「……あれ、何かしら」 泉ちゃんの指差すほうから、シャボン玉が舞っている。わたしたちは、そこに向かって、真っ直ぐすすんでいく。 そこには、たくさんのデジタマと赤ちゃんデジモンがいた。 「たまごが孵ってる!」 「きっと、あの時のデジタマだよ!」 産まれたばかりのデジモンたちを、抱える。 この子たちは、今デジタルワールドに於かれた状況を理解していない。ただ、純真に笑っていた。その笑顔が眩しくて、痛くて、わたしの心はちくちくとした。 「たかい、たかーい!」 「うわ、泣くなよ……!」 「ふふ、可愛い……」 皆、それぞれデジモンたちを愛おしんでいた。 生命を愛おしんで腕の中のピョコモンを見つめていると、ピョコモンはにっこり笑い返してくれた。 「ああ……! 生まれるです!」 パタモンの見つめる先には、デジタマがふたつあった。 そして、たまごが光ってデジモンが現れた。 「おれ、ロップモン。よろしくな」 「あたしプロットモン。あなたは、だあれ?」 「ボク、パタモンですう」 ーー赤ちゃんデジモンよりも少し大きなサイズで生まれた彼らは、きっとパタモンと同じ。 パタモンがセラフィモンの生まれ変わりと同じなように、プロットモンはオファニモン、ロップモンはケルビモンの生まれ変わりなのだとボコモンは語る。 かつての三大天使は、過去の垣根などなかったかのように話をして、あっという間に打ち解けた。 三体は昔からの大親友みたいにして、一緒に遊んでいる。 「生まれ変わったと同時に、浄化されたのね」 「逆だよ。浄化されたから、生まれ変わったんだ」 「どっちだっていいじゃないか。このまま、真っ直ぐに育ってくれれば――」 「ああ、その日が来るためにも……」 わたしたちは、壊れてしまったデジタルワールドを見上げる。 再び、平和な世界が訪れるようーーわたしたちは、立ち止まるわけにはいかない。 そう、意志を強く固めたときだった。 背後から、かつかつと何者かが歩いてくる音が聞こえた。赤ちゃんのデジモンたちは、一頭身で足もまだない子が多い。それなのに、この足音が聴こえてくるなんておかしい、としか言えなくてーー、 NOVEL TOP ×
|