正義を決めるものは
世界は奪われていく。それとは関係なしに、空は真っ青だった。[1/4] 共に戦え! ゴツモンと輝二の誓い わたしたちは、今日も進む。残された土地をまもるために。 今向かっているのは、前に輝二くんがビーストスピリットを手に入れたエリアだった。進化したら空を飛べる皆が、飛べないわたしや輝二くんたちを抱えて海を渡っていた。 ヴリトラモンには輝二くんと輝一くん、それと友樹くんがいた。輝二くんと輝一くんは、何か楽しそうに話していた。わたしは、その二人を見て何だか安心した。 「想、にやにやしてる。どうしたの?」 「え……? あ、……二人の仲が良いと、わたしも嬉しいなあ、って」 「ああ、あの二人ね。そうね、だいぶ、打ち解けられたみたい」 わたしは、フェアリモン――泉ちゃんと頷き合う。 まだまだ問題はいっぱいある。けれど、二人が話すことができて、本当によかったと思う。 しばらく進んでいっていると、陸の方でデジモンが追い詰められているのが見えた。助けないと――! 「ね、ねえ……あれ!」 「……っ、ゴツモンだ!」 「えっ!?」 輝二くんはすぐに誰だか分かったみたいだった。さすがだ。 でも、ゴツモンさん、って――。 ああ、そういえば、輝二くんがビーストスピリットを手に入れたときにいたひとだ。 そのひとが危険な目に遭っているなんて。――はやく、助けなきゃ! 「ミョルニルサンダー!」 最初に向かったのは、ブリッツモンだった。ブリッツモンが雷をナイトモン目掛けて轟かせる。 ナイトモンの何体かは、それによって吹き飛ばされた。 「ゴツモーン!」 わたしたちは、地上に降り立つ。輝二くんを見つけたゴツモンの瞳が潤む。 「こ、輝二、輝二なのか!?」 「話は後だ」 「いくぞ!」 「スピリット・エボリューション!」 わたし以外の皆は、人型の闘士となった。 数は多いけれど、一体一体の実力は大したことがないみたいで、攻撃するとあっという間に倒れていった。 「ふむ、これなら楽勝みたいだ、」 「スパイラル・マスカレード!」 楽勝、じゃなかった。 その声と共に、ゴツモンの背後にあった石像が、粉々に砕かれる。 こんな技を出すやつは――ロードナイトモン、だ。 「そんなぁ……!」 「もらったァ!」 ロードナイトモンが石像を砕き、デュナスモンが赤い宝石を手に取る。 そしてデュナスモンは、その宝石を握りつぶした。その瞬間、辺りがデジコードになってしまう。 「仲間がいるのに……!」 わたしたちは跳躍した。けれど、ナイトモンたちはどんどん引きずり込まれていく。 そして、とうとうナイトモンたちはダークエリアへ吸い込まれていった。 「貴様……! 仲間を巻き添えにして、なんとも思わないのか!?」 「仲間? 何を言っている。奴らは我が駒だ。――高貴なるロードナイトモン様の為に死ねるのだ。名誉だろう」 「この……外道め!」 思わず叫ぶ。 しかし、言ったところでロイヤルナイツには通用しない。 デュナスモンは、手に入れたデジコードを、地の底に放った。こうしてまた、エリアがルーチェモンの糧となった。 「これで、あと三つだ。森のエリア、氷のエリア、光のエリア」 「あと三つ。――残るエリアのデータをスキャンすれば、ルーチェモン様は蘇る」 「そんなこと、させるものか!」 「やってみろ。お前たちに、我らロイヤルナイツを止められるのならばな」 「――次は、森のエリアだ。その時にまた逢おう、色のお嬢さん」 「き、きしょくわる!」 ロードナイトモンはこちらを見てそう言った。とっさにわたし、というかイナバモンはそんなことを叫んだ。 ロードナイトモンは薔薇の花弁を振りまく。そうしている間に、あっという間にロイヤルナイツは消えてしまった。 「……っ、」 「ゴツモン!?」 ――残されたゴツモンさんは、ひどく絶望してしまって、ついには気を失い倒れた。 また、守れなかったんだ。 * 「……大丈夫か?」 ゴツモンさんが目をさます頃にはもうすっかり夜になっていた。 ベンチに横たわっていた。身体を起こそうとしても、まだ苦しいみたいだった。 泉ちゃんがゴツモンにハンカチを差し出す。 「すまなかったな……、俺たちの力が、及ばなかったばかりに」 「悪いのは輝二たちじゃない。それに、お前たちが駆けつけてくれなかったら、オイラは今頃……」 ナイトモンにやられていた。 他にも、大地を護るために戦って、そして亡くなったデジモンさんもいるのだろう。 ――はやく、ロイヤルナイツを倒さないと。 「ありがとう、助かったよ。……それより、行くんだ!」 「え?」 「アイツは言った。残りは三つだって。まさか、黙って見てるつもりじゃないだろうな!?」 「っ、当たり前だ。これ以上、奴らの好きにさせるかよ」 拓也くんは、消えた先の失われた大地を見ていた。 「まだ、わたしたちに出来ることはあるよ!」 わたしは拓也くんに続いて言った。 ――まだ、三つ残っている。すべてが失われたわけじゃない。それなら、わたしたちはそこを護るべき、なんだ。皆と話して、頷き合う。 「輝二! ……オイラも一緒に連れってってくれ」 「そんな、あぶないよ!」 「やつらは、そこいらのデジモンとはわけが違うんだ」 「頼む、オイラも一緒に戦わせてくれ!!」 ゴツモンさんがそう訴え、輝二くんを見た。真剣だった。 友樹くんや輝一くんの心配はもっともだ。けれど、ゴツモンさんはその心配も覚悟した上で言っているんだろう。わたしは、止める気にはなれなかった。 輝二くんも、それを感じ取ったみたいだった。しばらく時間が止まったみたいに、輝二くんは眉間にシワを寄せながらゴツモンさんを見ていた。 「……分かった」 「輝二っ!?」 「どうせ言ったって、こいつには聞かねえよ」 後ろ姿しか見えなかったけど、輝二くんは笑っているような気がした。二人は、そんなに仲が良かったのか。……全然、知らなかったなあ。 NOVEL TOP ×
|