正義を決めるものは
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共に戦え! ゴツモンと輝二の誓い
 世界は奪われていく。それとは関係なしに、空は真っ青だった。
 わたしたちは、今日も進む。残された土地をまもるために。
 今向かっているのは、前に輝二くんがビーストスピリットを手に入れたエリアだった。進化したら空を飛べる皆が、飛べないわたしや輝二くんたちを抱えて海を渡っていた。

 ヴリトラモンには輝二くんと輝一くん、それと友樹くんがいた。輝二くんと輝一くんは、何か楽しそうに話していた。わたしは、その二人を見て何だか安心した。

「想、にやにやしてる。どうしたの?」
「え……? あ、……二人の仲が良いと、わたしも嬉しいなあ、って」
「ああ、あの二人ね。そうね、だいぶ、打ち解けられたみたい」

 わたしは、フェアリモン――泉ちゃんと頷き合う。
 まだまだ問題はいっぱいある。けれど、二人が話すことができて、本当によかったと思う。

 しばらく進んでいっていると、陸の方でデジモンが追い詰められているのが見えた。助けないと――!

「ね、ねえ……あれ!」
「……っ、ゴツモンだ!」
「えっ!?」

 輝二くんはすぐに誰だか分かったみたいだった。さすがだ。
 でも、ゴツモンさん、って――。
 ああ、そういえば、輝二くんがビーストスピリットを手に入れたときにいたひとだ。
 そのひとが危険な目に遭っているなんて。――はやく、助けなきゃ!



「ミョルニルサンダー!」


 最初に向かったのは、ブリッツモンだった。ブリッツモンが雷をナイトモン目掛けて轟かせる。
 ナイトモンの何体かは、それによって吹き飛ばされた。

「ゴツモーン!」

 わたしたちは、地上に降り立つ。輝二くんを見つけたゴツモンの瞳が潤む。


「こ、輝二、輝二なのか!?」
「話は後だ」
「いくぞ!」

「スピリット・エボリューション!」


 わたし以外の皆は、人型の闘士となった。
 数は多いけれど、一体一体の実力は大したことがないみたいで、攻撃するとあっという間に倒れていった。


「ふむ、これなら楽勝みたいだ、」
「スパイラル・マスカレード!」


 楽勝、じゃなかった。
 その声と共に、ゴツモンの背後にあった石像が、粉々に砕かれる。
 こんな技を出すやつは――ロードナイトモン、だ。


「そんなぁ……!」
「もらったァ!」


 ロードナイトモンが石像を砕き、デュナスモンが赤い宝石を手に取る。
 そしてデュナスモンは、その宝石を握りつぶした。その瞬間、辺りがデジコードになってしまう。


「仲間がいるのに……!」


 わたしたちは跳躍した。けれど、ナイトモンたちはどんどん引きずり込まれていく。
 そして、とうとうナイトモンたちはダークエリアへ吸い込まれていった。

「貴様……! 仲間を巻き添えにして、なんとも思わないのか!?」
「仲間? 何を言っている。奴らは我が駒だ。――高貴なるロードナイトモン様の為に死ねるのだ。名誉だろう」
「この……外道め!」

 思わず叫ぶ。
 しかし、言ったところでロイヤルナイツには通用しない。
 デュナスモンは、手に入れたデジコードを、地の底に放った。こうしてまた、エリアがルーチェモンの糧となった。


「これで、あと三つだ。森のエリア、氷のエリア、光のエリア」
「あと三つ。――残るエリアのデータをスキャンすれば、ルーチェモン様は蘇る」
「そんなこと、させるものか!」
「やってみろ。お前たちに、我らロイヤルナイツを止められるのならばな」
「――次は、森のエリアだ。その時にまた逢おう、色のお嬢さん」
「き、きしょくわる!」


 ロードナイトモンはこちらを見てそう言った。とっさにわたし、というかイナバモンはそんなことを叫んだ。
 ロードナイトモンは薔薇の花弁を振りまく。そうしている間に、あっという間にロイヤルナイツは消えてしまった。


「……っ、」
「ゴツモン!?」

 ――残されたゴツモンさんは、ひどく絶望してしまって、ついには気を失い倒れた。
 また、守れなかったんだ。


*

「……大丈夫か?」


 ゴツモンさんが目をさます頃にはもうすっかり夜になっていた。
 ベンチに横たわっていた。身体を起こそうとしても、まだ苦しいみたいだった。
 泉ちゃんがゴツモンにハンカチを差し出す。


「すまなかったな……、俺たちの力が、及ばなかったばかりに」
「悪いのは輝二たちじゃない。それに、お前たちが駆けつけてくれなかったら、オイラは今頃……」

 
 ナイトモンにやられていた。
 他にも、大地を護るために戦って、そして亡くなったデジモンさんもいるのだろう。
 ――はやく、ロイヤルナイツを倒さないと。


「ありがとう、助かったよ。……それより、行くんだ!」
「え?」
「アイツは言った。残りは三つだって。まさか、黙って見てるつもりじゃないだろうな!?」
「っ、当たり前だ。これ以上、奴らの好きにさせるかよ」

 拓也くんは、消えた先の失われた大地を見ていた。

「まだ、わたしたちに出来ることはあるよ!」

 わたしは拓也くんに続いて言った。
 ――まだ、三つ残っている。すべてが失われたわけじゃない。それなら、わたしたちはそこを護るべき、なんだ。皆と話して、頷き合う。


「輝二! ……オイラも一緒に連れってってくれ」
「そんな、あぶないよ!」
「やつらは、そこいらのデジモンとはわけが違うんだ」
「頼む、オイラも一緒に戦わせてくれ!!」


 ゴツモンさんがそう訴え、輝二くんを見た。真剣だった。
 友樹くんや輝一くんの心配はもっともだ。けれど、ゴツモンさんはその心配も覚悟した上で言っているんだろう。わたしは、止める気にはなれなかった。
 輝二くんも、それを感じ取ったみたいだった。しばらく時間が止まったみたいに、輝二くんは眉間にシワを寄せながらゴツモンさんを見ていた。

「……分かった」
「輝二っ!?」
「どうせ言ったって、こいつには聞かねえよ」

 後ろ姿しか見えなかったけど、輝二くんは笑っているような気がした。二人は、そんなに仲が良かったのか。……全然、知らなかったなあ。

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