風はわたしに囁いて
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「もー、許さない!! マジで怒っちゃったんだから!」


 ラーナモンはそう言いながら、スライドエボリューションした。うわあ、出たよ、あのイカの人。
 カルマーラモンは口からイカスミみたいなものを吐き出す。え、き、汚い。
 イカスミの当たった岩は、ジュウッと嫌な音を立てて溶ける。


「これなら、どうよ!」
「うわああっ」


 わたしたちのイカダ目がけて、イカスミが飛んできた。けどわたしたちはとっさにかばってくれたシューツモン、のお陰で無傷だった。
 ――でも、受け止めてくれたシューツモンの翼の一部が溶けてしまった。カルマーラモンはじりじりと責めて来る。
 吐く、避ける、の攻防を繰り返しているうちに、シューツモンはカルマーラモンの触手でつかまってしまった。


「い、泉ちゃん!!」
「オホホホホ!!」


 カルマーラモンは下品に甲高く笑う。
 そんな……、またわたしは何もできないの!?


「くそ、デジヴァイスさえあれば……!」
「やめろースルメ女!!」


 ぴた。
 純平さんがそれを言った瞬間に、カルマーラモンの動きは停止する。
 なんですって!? とカルマーラモンは振り返る。うわあああどうしよ火に油注いだ? でも事実だし……


「これだ! あいつの悪口を言って、気を反らせるんだ!」


 って、おい。いいのか輝二くん!!
 でもでも、輝二くんは真顔でした。拓也くんもそうか! とか言ってるし……。


「お、おたんこなすー!」
「サンカク頭のぬめぬめ女! そんなんじゃ一生彼氏出来ないぞ!」
「い、イカよりタコのほうが好きー! あとケバいよ―!」


 やいやいと、わたしたちはカルマーラモンに悪口を言いまくる。
 って、この案出したの輝二くんのクセに、隣にいる輝二くんは何も言ってないよ!? うわあ、ひどい……。


「お前ら! 許さん!!」


 あ、やっぱりキれた。そりゃあそうだろうなあ。
 わたしたちに怒りの矛先が向かった瞬間、触手の力がゆるんでシューツモンが脱出する。さ、作戦成功だ。


「! しまった!!」
「ウィンドオブペイン!」


 シューツモンは技を放って、強い風がカルマーラモンに襲いかかる。カルマーラモンは海に沈まり、だけどもまたすぐに身体を起こした。


「よ、よくもやってくれたわね!」
「あー化粧が剥げてるううう!」
「海のデジモンのくせにウォータープルーフじゃないの!?」


 カルマーラモンの顔はお化粧が崩れてべとべとだった。
 ウォータープルーフじゃ……と言ったら、輝二くんに問題がズレてるぞとか言われたけどだって、ねえ。海のデジモンなのに水で落ちちゃうお化粧するなんて。


「え、ええいお前ら、皆まとめてギッタギタにしてやる!!」


 カルマーラモンは「タイタニックチャージ!」と叫びながら、身体を高速で回転させた。やばい、来る……!!



「って、いやあああ! 今日はこのへんで勘弁してやるううううぅ!」


 ――まだ、制御できてなかったカルマーラモンは、遠くお空へ飛んでいって見えなくなった。


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