風はわたしに囁いて
[5/6] 「もー、許さない!! マジで怒っちゃったんだから!」 ラーナモンはそう言いながら、スライドエボリューションした。うわあ、出たよ、あのイカの人。 カルマーラモンは口からイカスミみたいなものを吐き出す。え、き、汚い。 イカスミの当たった岩は、ジュウッと嫌な音を立てて溶ける。 「これなら、どうよ!」 「うわああっ」 わたしたちのイカダ目がけて、イカスミが飛んできた。けどわたしたちはとっさにかばってくれたシューツモン、のお陰で無傷だった。 ――でも、受け止めてくれたシューツモンの翼の一部が溶けてしまった。カルマーラモンはじりじりと責めて来る。 吐く、避ける、の攻防を繰り返しているうちに、シューツモンはカルマーラモンの触手でつかまってしまった。 「い、泉ちゃん!!」 「オホホホホ!!」 カルマーラモンは下品に甲高く笑う。 そんな……、またわたしは何もできないの!? 「くそ、デジヴァイスさえあれば……!」 「やめろースルメ女!!」 ぴた。 純平さんがそれを言った瞬間に、カルマーラモンの動きは停止する。 なんですって!? とカルマーラモンは振り返る。うわあああどうしよ火に油注いだ? でも事実だし…… 「これだ! あいつの悪口を言って、気を反らせるんだ!」 って、おい。いいのか輝二くん!! でもでも、輝二くんは真顔でした。拓也くんもそうか! とか言ってるし……。 「お、おたんこなすー!」 「サンカク頭のぬめぬめ女! そんなんじゃ一生彼氏出来ないぞ!」 「い、イカよりタコのほうが好きー! あとケバいよ―!」 やいやいと、わたしたちはカルマーラモンに悪口を言いまくる。 って、この案出したの輝二くんのクセに、隣にいる輝二くんは何も言ってないよ!? うわあ、ひどい……。 「お前ら! 許さん!!」 あ、やっぱりキれた。そりゃあそうだろうなあ。 わたしたちに怒りの矛先が向かった瞬間、触手の力がゆるんでシューツモンが脱出する。さ、作戦成功だ。 「! しまった!!」 「ウィンドオブペイン!」 シューツモンは技を放って、強い風がカルマーラモンに襲いかかる。カルマーラモンは海に沈まり、だけどもまたすぐに身体を起こした。 「よ、よくもやってくれたわね!」 「あー化粧が剥げてるううう!」 「海のデジモンのくせにウォータープルーフじゃないの!?」 カルマーラモンの顔はお化粧が崩れてべとべとだった。 ウォータープルーフじゃ……と言ったら、輝二くんに問題がズレてるぞとか言われたけどだって、ねえ。海のデジモンなのに水で落ちちゃうお化粧するなんて。 「え、ええいお前ら、皆まとめてギッタギタにしてやる!!」 カルマーラモンは「タイタニックチャージ!」と叫びながら、身体を高速で回転させた。やばい、来る……!! 「って、いやあああ! 今日はこのへんで勘弁してやるううううぅ!」 ――まだ、制御できてなかったカルマーラモンは、遠くお空へ飛んでいって見えなくなった。 NOVEL TOP ×
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