いろのせかい
「見つけたぞお、ガキども! オレの仲間だ!」[3/4] ラーナモン、という水色の人魚やカエルみたいなデジモン。 アルボルモン、という茶色いロボットみたいなデジモン。 メルキューレモン、という顔とか身体に鏡が付いてるデジモン。な、何このひと――。 「ケルビモンの手下――。オファニモンはどこにいる!」 「そーんなの知るか! オレのビーストスピリットを返してもらう!」 グロットモンがハンマーを構えた。戦いがはじまる――! 進化だ! と叫ぶ拓也くんの合図で、男の子組は進化する。 「あたしも、スピリットさえ奪われなければ――!!」 わたしは――デジヴァイスがあるだけで、何もできない。 何でこの世界に来たんだろう。 「レインストリーム!」 ラーナモンが雨を降らす。相当力の強い雨みたいで――みんなボロボロにやられていた。。何もできないのはわたしだけだ。そう言えば、きっと拓也くんなんかは「想はスピリットがないからしょうがないよ」と言ってくれるんだろう。けれど、そこで納得しているのも嫌、だった。 「マシンガンダンス!」 アルボルモンの、攻撃。足をしゅるしゅる飛ばしてそれをぶつけるみたいだった――でも何かおかしい。 ――何で、それがわたしのほうに向かってるの。もしかしたら、わたしの近くにいるセラフィモン様とかが目的なのかもしれない、けど。 いきができなくなる。じかんがたつのが、おそいきがする。――わたし、死ぬの? ガツン、と音はした。でも、わたしに痛みはなくて―― 見上げると、そこにはあの時のヘビデジモンさんがいた。もしかして、また助けてくれたのか――と思ったけど、それは違った。 「痛。木、あんたコントロールするの下手なのね」 「ハクジャモン! おめー来るのおっせぇんだよ! 紹介するぜ、色の闘士、ハクジャモンだ!」 グロットモンはそう言った――ヘビデジモンさんは敵、なの? あの時、迷子のわたしを助けてくれたわけじゃなかったんだ。そうか、だから『スピリットなんてあなたにはいらない』なんて言うんだ。そりゃ、そうだよ、ね――。 ボコモンが「あれは色のビーストの闘士じゃ!」とか言う声も、何もどうでもよくなった。 「敵、ならどうしてわたしを助けたの?」 「……」 自分でもびっくりするぐらい、冷たい声が出た。ハクジャモンは黙っていた。 最初から、作戦だったんだ。助けたように見せかけて、嘘を付いたんだ。嘘。それがどれだけ重いものかなんて、わたしが一番よく知っている。そうしてわたしも人を傷付けたことがあった。だからこそ、わたしは人の嘘が嫌いなんだ。 涙がぼたぼた落ちて、床にしみができる。 「想、落ち着いて――!」 泉ちゃんがわたしを抑えようとする。周りを見渡せば、敵にやられて傷ついた皆が目に映る。 どうして、わたしじゃ何もできないの。逃げてばかりだったから? それならもう、逃げないよ。 皆のことなんかまだ全然分かんないし、わたしなんかが誰かを信じていいのか――なんて自信がない。だけど。 いつも人を思いやってる拓也くんや、わたしなんかを友達として接してくれる泉ちゃん。ヒーローみたいに勇気のある友樹くん、いつでもムードメーカーな純平さん。――そして、少し冷たいけどいつも助けてくれる輝二くん。 ただ、皆みたいになりたい、と思った。わたしに優しくしてくれる輝二くんに恩返しがしたい、と思った。 「スピリット……」 どこの部屋から飛んできたか――は分からないけど、わたしのもとにスピリットが飛んできた。 わたしのデジヴァイスは、すんなりそれを受け入れる。そして、わたしは。 「スピリットエボリューション!」 身体全身がデジコードに包まれていく。わたしがわたしではなくなる感覚がする。でも、その感覚は不快じゃなくて、むしろ心地いい。そう、今のわたしは―― 「シキモン!」 シキモン。彼女と同じなのだから。 NOVEL TOP |