壊れかけた星で
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「……ッ、この音は」
「トレイルモン!」


 わたしは、突然聞こえてきた音の方を見る。トレイルモンのワームが、走ってきていた。トレイルモンはデュナスモンに突進して、そして長老さんは解放される。ロードナイトモンの気がそらされたため、勝くんに浮き出ていたコードも消えた。
 トレイルモンには、皆が乗っていた。


「勝春、友樹、想!!」

 最初に拓也くんが飛び出す。――すごく、久しぶりに逢ったような気がする。拓也くんを見ると、何だか安心してしまった。

「想!!」


 拓也くんが出たのとほぼ同時に、――というか拓也くんを押しのけるように輝二くんが現れた。
 輝二くんは、一目山にわたしのもとに駆けつけた。そして、輝二くんはわたしの身を起こすなりわたしに抱きついた。突然すぎたから、照れるとかよりも驚きが大きかった。


「こう、じ、くん……?」
「想! 痛いだろう、俺が戦えなかったからだ、ごめん」
「ううん。……助けに来てくれて、ありがとう」


 輝二くんにこうされるのなんて、いや、男の子に抱きつかれるなんて始めてだ。
 皆が、輝二くんが助けに来てくれたことが嬉しくて、わたしの視界がにじむ。
 何でわたしはこんなに泣き虫なんだろう、とか思う。けれど、デュナスモンとロードナイトモンがこわかった、くるしかった。


「……っ、ほんとうは、すっごく、こわかった、の」
「もう大丈夫だ、想」

 輝二くんはわたしを落ち着かせようとして、わたしの背を撫でてくれた。その行為に、わたしはまた泣いてしまう。

「あの二人だけ別次元だね」
「あいつら付き合ってんのかよ……」
「い、泉ちゃん、おれたちも……」
「純平が痩せたらね」

 ――わたしたちの方を見ていた輝一くん、勝春くん、純平さん、泉ちゃんの声が聞こえたような気がしたけれどきっと気のせいだと思う。


「ねえ、これ、外せる?」
「まかせて!」

 拘束されていた友樹くんのリボンを、マメモンが壊してくれた。
 わたしも輝二くんの手を取って、何とか立ち上がる。そして、拓也くんたちの方へ向かった。


「大丈夫? 想、友樹」
「ボクは、大丈夫!」
「い、いずみ、ちゃん……」


 わたしが涙顔になっていると、泉ちゃんは「頑張ったわね、」と言ってわたしを撫でてくれた。
 ――その時、またロードナイトモンのリボンが放たれた。逃げられない! と思えば、トレイルモンが口から火を吐いてそれを燃やしてくれた。
 ロイヤルナイツが相手じゃ、拓也くんと輝二くんに戦ってもらうのが一番だ。
 わたしたちは顔を見合わせ頷く。

「色は世に、世はすべてに!」

「ハイパースピリット・エボリューション!」

 そして、カイゼルグレイモンとマグナガルルモンがわたしたちの前に姿を表す。

「九頭龍神!」
「ドラゴンズ・ロア!」

 二体の攻撃がぶつかり、空中で相殺しあう。

「マシンガン・デストロイ!」

 マグナガルルモンはロードナイトモンに必殺技を喰らわせていく。
 ロードナイトモンは、舞うようにそれを避けてしまった。


「今のうちに皆を……!」

 わたしたちは呆然とそれを見ていた。けれど、純平さんのその言葉ではっとする。
 友樹くん、勝春くんたち、マメモンがトレイルモンの中に避難し始める。最後に輝一くんがトレイルモンに乗ろうとしたとき、ロードナイトモンが必殺技を放った。


「スパイラルマスカレード!」
「あぁっ!」

 マグナガルルモンが倒れ、動揺した輝一くんをロードナイトモンが捕らえる。

「輝一! やめろ、輝一を放せ!」
「……、なるほど。この人間を庇って攻撃できないのか」
「っ、ウワアアアアッ」

 ロードナイトモンが輝一くんを強く縛る。カイゼルグレイモンが助けに行こうとしても、デュナスモンがそれをさせなかった。
 何も出来ずに、マグナガルルモンもロードナイトモンにやられている。


「輝一を放せ!」
「こ、輝一くん……っ! 卑怯だよ卑怯っ」
「正々堂々と戦えー!」
「私のように美しい者は、何をしても許されるのだ」

 ――その一言に、鳥肌が立った。
 このデジモン、確実に頭おかしい。少し前に戦ったアイスデビモンとおんなじ、変態ってやつだ。

「今じゃ、かかれ!!」

 長老さんが叫ぶと、いつの間にか豆の木に登っていたマメモンが、ロードナイトモンに襲いかかる。それによって隙ができて、マグナガルルモンは輝一くんを解放した。よかった!!


「ごめん、輝二」
「輝一、無事で良かった!」

 ――よかった、はずなんだけど。何だか、二人からは妙にきらきらした雰囲気が漂っている。ええええ。

「フッ、美しい……」

 ロードナイトモンも何言ってるんだ。

「やっぱり変だこいつ……」
「い、いや双子くんもだいぶおかしくない!?」
「さっきの輝二と想はこれよりもっとひどかったわよ」
「えっ」


 兄弟仲が良いのは大変よろしいことだとは思うけれど、わたしもさっきまでこんな雰囲気をまき散らしてたんだろうか。うわあ恥ずかしい消えたい。
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