壊れかけた星で
[4/4] 輝一くんが助けられた一方、カイゼルグレイモンは追い詰められていた。 「これ以上ルーチェモン様をお待たせするわけにはいかない」 「うむ、片をつけよう」 いけない、と思った。 ロイヤルナイツは、必殺技をカイゼルグレイモンとマグナガルルモンに放った。力の差が圧倒的すぎて、二人はうずくまってしまう。 「覚悟はいいか」 「お前たちに、美しき死を」 「待て、ロイヤルナイツ! キーは豆の木のてっぺんに成っている黄金の豆だ!」 長老さんが、トレイルモンから飛び出してそう言った。そんな、どうして――! デュナスモンは空を見上げ、そして高くへ飛んでいった。 デュナスモンが見えなくなったかと思うと、豆の木がどんどんコード化していくのが見えた。この大地も、このままでは消えてしまうだろう。 「皆、早く!」 泉ちゃんが急かす、トレイルモンが閉まり発車する。カイゼルグレイモン、マグナガルルモンも空を飛ぶ。 大地が、無くなった。 「マメモンの村もなくなっちゃった……」 「勝春、お前たちは人間界に帰るのじゃ」 「マメモンたちも、一緒に行こう! 住む場所は、なんとかなる!」 「デジタルワールドは、ワシらのふるさとじゃ。村はなくなってしもうたが、また作ればええ。じゃが、友達や仲間の命は、取り返しが付かん。ワシらは、また豆を植えて大きく育てる」 長老さんは、そうして手を差し出した。そこには、黄金に光る豆があった。――まだ、希望は残っていた。だけど、悲しい。 「勝春たちが植えてくれた豆の木に、負けないようにな!」 長老さんは、確かな未来を信じていた。 * わたしたちはターミナルにいた。 「本当に、残るの?」 照男くんが訊ねる。わたしたちも一緒に帰るものだと思っていたみたいだった。 拓也くんは「まだやらなきゃいけないことがあるからな!」と言った。 鉄平くんも、一緒に帰ろうと友樹くんを説得した。友樹くんは、首を横に振る。 「デジタルワールドを、救いたいんだ。ボクたちにとっても、ここはふるさとだから!」 「……頼んだぞ」 「うん!」 勝春くんの表情は、少し晴れ晴れとしていた。本当は、悲しいんじゃないかと思った。エンジェモンさんを喪って、何も出来ないでこのまま帰ってしまう、のは。 「さぁさ、帰るのはオレたちだけだ」 勝春くんは、他の三人をトレイルモンに押しこむ。 わたしは、勝春くんに声をかけた。 「わたしっ、デジタルワールドから戻ったら、必ず勝春くんたちにデジタルワールドのこと、話すから!」 ルーチェモンを倒したことを、必ず。――それは、誓いだった。 勝春くんはきょとんとしていたけれど、笑った。 「ありがとよ。彼氏とも仲良くやるんだぞ」 「ぶっ!」 「かれ……!?」 突然の言葉にわたしは噴きだしてしまう。輝二くんも露骨に動揺している。勝春くんはにやにや笑っているまま、トレイルモンに乗ろうとしていた。 かと思えば、彼は急に振り返った。 「友樹。……押せよ」 「え、」 勝春くんは、自分の背中を指さす。 「これで、おあいこだ」 「っ! うん!」 友樹くんは、力いっぱい勝春くんの背中を押す。 元はといえば、勝春くんに背中を押されてデジタルワールドにやって来た友樹くんだ。それを思ったら、友樹くんはとっても強くなれたんだ。まるで、友樹くんが憧れているヒーローみたいに。 「人間界へ出発!」 トレイルモンが発車する。だんだん、勝春くんたちと距離が離れていった。 友樹くんは、見えなくなるまで、ずっと笑顔でトレイルモンを見送っていた。 * 「友樹くん、すごかったね、ヒーローみたいだった」 「うん、ありがとう! ボク、皆やデジタルワールドが大好きだよ、デジタルワールドに来れて――強くなれて、本当に良かった」 友樹くんは、笑っていた。 来るつもりなんかなかったこの世界に友樹くんとわたしが過ごすようになったのも、意味のあることだったんだ。わたしはそれが嬉しくて、だからこそ早くこの世界を救わなくちゃいけないんだと思った。 ――こうしている間にもまた、どこかの大地が欠けているんだ。 131013 NOVEL TOP |