わたしが力となれるなら
わたしはセフィロトモンを見上げていた。拓也くんは、あの中でまだ戦っている。[1/3] 拓也の融合進化 アルダモン技炸裂! わたしは、輝二くんの跡を追わなかった。わたしは、ここで拓也くんを信じている。 「どーして産まれなかったのかな?」 結局、たまごは孵らなかった。本当に、あれは奇跡の力だったんだ――、と実感する。 わたしはセフィロトモンの中へ入ることができない。だから、セフィロトモンを倒すことはできない。 メルキューレモンは相当強い力を持っている。わたしは拓也くんが勝ってくれると信じている。 「輝二を追いかけなくて、よかったのかな?」 純平さんが言った。輝二くんには、輝二くんの戦いがある。わたしはセフィロトモンの最期を見たかった。 ねえ輝二くん。わたしもこの地で頑張るよ。だから、輝二くんもどうか無事でいて。そして、あの子を戻して。 「っ、ねえ、見て!」 そこでわたしは再びセフィロトモンを見上げる。セフィロトモンの頂点の球体が光っていた。 そこには、アグニモンとメルキューレモンがいた。 「セフィロトモンの中に、メルキューレモンがいる……」 どうしてメルキューレモンが存在することができるのだろう。 球体の中には、鏡がたくさん映っているのが見える。アグニモンは、鏡を割って戦う。アグニモンは必殺技を放つ、けれど、それはメルキューレモンの鏡に弾き返された。 それから二体のデジモンは、違うエリアへと移動した。そこは、教会だった。教会は神聖なはずなのに、映しだされたそこには禍々しさがあった。 見ているだけで不安になるのは、まるでダスクモンみたいだった。そこに、磔にされたセラフィモン様が球体に映しだされる。 「どうして、何でセラフィモンが……?」 「あいつにやられたんじゃなかったのか!?」 「ど?なってんの??」 「……」 やっぱり、だった。望ちゃんはケルビモンの側にいながらも、あれを食い止めようとしていた。 望ちゃんが現実世界に戻ってしまった今、わたしは望ちゃんの意志を継ぎたい。わたしも今、あそこに行って拓也くんと共にメルキューレモンを討ちたかった。 メルキューレモンがセラフィモン様のデータを取り込む二体のデジモンが同化していく。 「あぁっ!」 「……堕天使、だ」 現れたセラフィモンは、すっかり堕天して姿を変えてしまっていた。 堕天使はアグニモンを襲う。元々が、神様のデジモンだったから強くて当たり前だ。けれど、このままでは拓也くんの身が危ない。 わたしは、ボコモンの腹巻に収まるたまごを見た。もし、また輝二くんがベオウルフモンになったときのような奇跡が起きたら。 「どうなってるの!? なんで、セラフィモンがアグニモンを襲ってるの!?」 「いや、あれはセラフィモンではない! セラフィモンのデータを採り込んだメルキューレモンじゃ!」 「何だって!?」 「……拓也くんを、助けなきゃ」 もちろん、それは簡単なことじゃない。奇跡なんてそうそう起こらないものだった。けれど、わたしは拓也くんが勝てることを、信じていたかった。 それはこの世界で、もう一度望ちゃんと巡り会えたように。皆と出会えたように。 「けれど、無理だ! 進化しても敵わないなんて……!」 「そうよ、ただでさえ手強い相手なのに、セラフィモンと融合してるのよ……!」 わたしの言葉に、二人は反論した。 「いや……、方法はあるぞい!」 ボコモンが考えていたのは、ダブルスピリット・エボリューションだった。 わたしは、デジヴァイスを見つめる。ここには、世のスピリットがある。たまごと、スピリットがまた力を貸してくれるなら――、きっと。 NOVEL TOP |