咎を抱えて色褪せる
わたしは、しばらく砂浜を歩いていた。一歩進むごとに、靴が砂に沈む。気持ち悪い。[3/5] 不快感がしたから早く足を進めようとした。けれど、波の音が近付いていることに気づいて、わたしは海のほうを見た。――そして、波の音が大きくなったかと思うと、海面からデジモンが現れた。イカのような、悪魔のような姿のデジモンだった。 「スピリットを渡せ!」 触手が、わたしの方に伸びる。わたしは、デジヴァイスを構えた。 「スピリット・エボリューション! シキモン!」 跳んで、シキモンは触手の上を駆け上がり、イカに拳を喰らわせた。しかしそれでも相手は怯むことはなく、他の触手でシキモンのお腹を縛り付けた。息がしづらい。 「雑魚が。ギルティブラック!!」 「可、可視光拳ッ!」 イカが、口からイカスミのようなものを吐く。シキモンはそれに対抗し、衝撃波を放つ。 イカスミと衝撃波がぶつかり、相殺された。結局イカの攻撃は免れることができたけれど、相変わらずシキモンはお腹を締め付けられたままだ。息ができずにくらくらとめまいがし、シキモンは触手から抜けだそうとする。だけどもがけばもがくほど、余計に触手が絡みつく。 「ぬ、抜けぬ……ッ!」 「色の闘士も呆気無いものだな。これでもう終わりか?」 「ちッ……! 苦無、乱舞!」 シキモンは、必死にクナイをまいた。クナイが、触手に突き刺さる。 「何、ッ!」 イカはこれ以上やられるとは思っていなかったようで、ほんの一瞬、触手の力が緩む。シキモンは精一杯力を振り絞って、クナイから抜けだした。 「はあっ……、」 けれど、折角抜けだしたところでこちら側に不利があるのは当然だった。息が、荒い。 「随分とナメたことをしてくれる。だが、それもいつまで続くかな」 「ここで、負けるわけには、いかないもの……!」 シキモンから出た声は、わたしの声だった。わたしは、皆に輝二くんにまた再会するために戦わなくちゃいけない。そして、望ちゃんへの罪を償わなくてはいけない。 「何を言うか、小娘が」 「……ッ!」 触手が再びシキモンに向かおうとしたとき、虹色のヘビが触手に放たれた。 ヘビが現れた方にいたのは、ハクジャモンだった。 「そいつは私の獲物よ。どきなさい、マリンデビモン」 「色の闘士が揃ったか。丁度良い、二人まとめて叩きのめ――」 「蠱虹蛇」 また、虹色のヘビがマリンデビモン、に襲いかかった。ヘビはマリンデビモンを喰らうように、マリンデビモンを打つ。たったそれだけの攻撃で、デジコードが浮かび上がった。 「な、何ッ……」 「コード、スキャンするね」 そう言って、ハクジャモンはデジコードを巻き上げる。――やっぱり、また私を助けてくれた。 「私は忙しい人だから、もう行くわ。御機嫌よう。貴方はここでじっとしているいいわ」 ハクジャモンはシキモンに向かって手を広げる。その瞬間、わたしは途端に身動きが取れなくなってしまう。動きを制御されたようだった。 「は、ハクジャモン、」 待って、行かないで。 どうしてわたしを助けたの。はじめて、出会った時から。どうしてわたしを知っているの――。 ありえないはずだ。だけれど、望ちゃんの姿が重なって見える。 「あなた――、望ちゃん、なの?」 「……」 彼女は、何も言わない。 「どうして、わたしを助けてくれるの、わたしが望ちゃんを突き落としたのに、どうして――、」 言葉が止まらなかった。口から言葉が溢れる。 私が彼女の背中に語っていると、彼女は、振り返った。金色の瞳が、わたしを見つめている。そして、口が揺れた。 「……想」 「の、望ちゃん?」 「いつか、ばれるだろうとは思っていたわ」 彼女はわたしの言葉を肯定し、頷いた。進化は解かないままだった。どうして、望ちゃんがここにいるのだろう。どうして、ずっと――。 NOVEL TOP |