丁重にお断りします



「ねえ、凛。男子校ってさ、やっぱり、ゲイって多いの?」


姫の言葉に思わず口に入れていた珈琲を吹きだした。汚いなあ、といいながらテーブルに備え付けられている紙ナフキンを手渡してくるのをうつむいたまま受け取り、口元を覆った。


「ねえ、質問の答えは?」

「しらねぇよ」

「むっ、まじめに聞いてるのに!」


よくもそんな事を自分の彼氏に聞けるものだと思う。第一、そんな奴らがいたところで俺には関係ないし、姫に至ってはなお関係ない。


「俺ってお前の何だよ」

「未来の旦那様」

「あー…はいはい、そうそう」


真面目な顔して何を言うか。
思わず、顔を逸らす俺の視界の端で、満足したように笑う姫がいた。まあ、あれだ。間違っちゃいないが、これは俺からいずれ言うことであって、先にカミングアウトされていいことでもない。

まあ、いいんだけど。


――可愛いし。


「でね、凛の未来の奥様としてね」

「ん」

「やっぱり、凛って綺麗な顔してるし、心配なわけでね!」

「ん……?」


何がどう心配なんだ。
綺麗な顔しているどうのこうのは、別に男所帯の中では関係ない話で、女もいないそこで浮気の心配もない。

まあ、ぜってーねーけど。


「男の子同士でそういうのあったら、凛狙われちゃうかもしれないでしょ?」

「!?」


思わず身震いした。
なんつーことを想像してんだとか、それを何の躊躇なく俺に話せてしまうとこだとか、諸々受けて俺の思考は一時停止した。


「ぜってーありえねぇ!!」

「だって、凛、遙くん大好きでしょ?」

「はあ!?何でそこでハルが出てくんだよ!!」

「だから、遙くんみたいな人に迫れれたら逃げられないかと思って、ね」


こいつの頭ん中はどうなってんだ。
どうしたって、俺がそうなって、男なんかと、気色悪い。冗談じゃねえし。


「凛、私の事、捨てたりしないよね?」

「んな当たり前のこと聞いてんじゃねぇよ」


これは冗談じゃなくてマジで言っているのか、とそう分かったのは、姫が今にも泣きだしそうな顔をしてこちらを見上げてくるのを見た時だった。

なんか、不安になる方向が違ーけど、それでもなんか、こういうのはやっぱ愛されてるって実感するっつーか。


「なあ、」

「?」



お前以外は、
(り、凛っ)
(俺はお前のもんで、お前は俺のもん。これはずっとかわんねーから、覚えとけ)
(は、はいっ)


13.12.04
編集20.01.11