デイドリーム



この気持ちの終着点は 1

「ん、…あ、あっ…んっ…はぁっ…」

荒北の骨ばった手で、わたしの体は蕩ける。
荒北の手は、わたし以上に私の体を知っている。
わたしが触ったことのない、体の隅々まで見て、触って、味わっているから。

体は蕩けても、頭はいつもどこか冷たい。

荒北とわたしは、いわゆるセフレの関係。
体は何度もつながっていても、心は全くつながることはない。

いったいいつまでこの関係をわたしは続けるのだろう…。


◇◇◇
荒北とわたしは中学が一緒だった。
同じクラスになって、仲良くなり、わたしは荒北唯一の女友達だった。

荒北があれていた時期も一緒にいた。
そのあれている時期に、わたしたちは今の関係になったのだから。
部活に入れ込んでいる荒北だけど、時折ふらっと連絡をよこしては、わたしと関係を持っている。

最初のきっかけは、荒北からの一言だった。

荒れていたころ、荒北は寮に帰りたくないからと、わたしの家に入り浸っていた。
雑誌やマンガを読んだり、ゲームしたり、だらだらと時間を内で過ごして、門限ぎりぎりで帰っていく。

そんな生活を毎日していた。
そんなある日、

「…なぁ、…ヤラねぇ…?」

その一言で、今の関係が始まった。

最初は、彼氏もいないし、そういうことに興味もあったし、荒北のことも嫌いじゃないし。
そう思って始めた関係だった。

そしてある日、荒北は自転車部に入部した。
日の当たる世界に戻った荒北は格好良かった。
やっぱり、何かに打ち込んでいるアイツの目が好きだ。

そして、そのギラギラした目を、わたしを抱いているときもしているから、勘違いしそうになる。
乱暴そうに見えるけど、わたしを触る手は優しく、どこまでも私を蕩けさせてくれる。

最初は割り切って始めた関係だったけど、だんだん私の心は欲張りになる。
でも、荒北の心を求めたら、この関係が終わってしまいそうで。
荒北の横にいると、だんだん苦しくなることが多くなった。

◇◇◇
わたしと荒北は、学校ではほとんど接点がない。
同じ中学出身と知っている人間なんていないから、当たり前だ。

いつも一緒にいる女友達が委員会に呼ばれ、中庭で一人昼休みを過ごしていたら、

「荒北くん、…あの……好きです。付き合ってください!」

いきなり聞こえてきた告白の声。
声の主は、隣のクラスのかわいい子だった。

わたしの姿はちょうど茂みに隠れて、彼女たちからは見えない。
誰もいないであろうと思って、ここを告白場所に選んだんだろう。

荒北に彼女ができたら…。
わたしはもう荒北とは一緒にいられない。
そう思っていたら

「ワリィけど、アンタとは付き合えねぇ」

荒北に彼女が出来たら…そう思って、指先が冷たくなるのを感じていたが、
荒北のその言葉を聞いて、わたしはホッとした。

「彼女とか、めんどくせーし、ヨ」

ホッとしたのもつかの間、わたしはどん底に突き落とされた。

彼女とか、めんどくさい
それは、彼女に対して向けられた言葉ではなく、わたしへ向けられた言葉かもしれない。
そう感じた。

わたしはどこまでいっても、荒北のセフレでしかないんだ。
彼女は面倒でいらないけど、性欲を発散させるには、ちょうどいい相手。
わかってはいたけど、現実に聞いてしまうと、心臓がつぶれるほど痛かった。



モヤモヤとした心のまま、わたしはこの天気と同じようにどんよりと過ごしていた。
そんな私の気持ちとは裏腹に、

「高篠さん、好きです。付き合ってください!」

同じクラスの杉本君に告白された。
これは、いいきっかけかもしれない。
アイツから離れるのには…。

「…わたしでよければ…」


それからわたしは杉本君と一緒に帰ったり、放課後デートなどをするようになった。
そんなある日、

『屋上で待ってる』

荒北からの連絡がきた。

どうせアンタはわたしが誰かと付き合い始めたことなんて知らないのだろう。
いつも自転車が一番で、彼女なんか面倒で、ただ性欲を満たせればそれで充分。
アンタにとって、わたしなんてそんな存在。

屋上のドアを開けると、給水塔の壁にもたれて立っている荒北の姿が見えた。

「なに。学校で呼び出すなんて珍しいじゃん」
「…そうか?」
「で、なに…?」
「なんか用がないとダメなのかよ?」
「…呼び出すの、…これで最後にして…」
「…なんでだよ」

荒北がすごく不機嫌そうに、わたしに聞いてくる。
やっぱり私のことなんてこれっぽっちも知らないし、気にもしていない。

「…彼氏、できたから」

荒北の目は見れなかった。
それを聞いても動じることなく、冷たい目で私を見ているんじゃないかという気がしたから。

「じゃあ、わたし、行くから…」

荒北に背を向けて、屋上から出ていこうとしたその時、わたしの体は荒北のほうに引き寄せられた。

「んっ、…んん―――!!」

乱暴なキス。
容赦なく舌を入れて私の口内を犯す。

「…これで最後にスッからヨ」
「ちょっ…、やっ!」

荒北の手がスカートの中に入ってきて、太ももを撫でながら、上に上がってくる。
下着の上から荒北しか知らない場所を触られる。
その間も荒北の舌がわたしの息するのを阻むように責め立てられる。

「んっ…あ、ら、き…っっ!」


彼氏できたって言ってるのに…。
そんなことお構いなしの一方的な行為。

今までとは全く違う、乱暴な触り方。
わたしのことを全く映していない眼。
冷たい色。
すべてが悲しくて、痛かった。
アンタにとって、わたしって何…?
そう思ったら、ツーっと涙がこぼれてきた。

私の涙を見で、荒北の手が止まった。
そして、わたしからゆっくりと離れる。

「…チッ。…わーったヨ。そんな泣くほどイヤなら、やめてやるよ」

荒北は屋上のドアを開けながら

「…彼氏とおしあわせにィ」

そう残して去っていった。




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