デイドリーム



さくらんぼ

部室に行くと、みんながなにやら盛り上がっている。

「ねーねー、何盛り上がってんの?」

「沙羅!さくらんぼをもらったぞ!」

「そうなの?」

「顧問から差し入れだってさ。太っ腹だな」

「みんなで食おう!」

わいわい言いながら、昼休みにみんなで食後に、さくらんぼを食べる。

「〜〜んん!あっま〜い!」

「本当だな」

「ウメーな、コレェ!」

「無限に食べられそうだぞ!」

みんなでパクパク食べていると、新開の手が止まって、じっとさくらんぼを見ている。

「どうしたの?」

「いや、さくらんぼといえばさ、茎でこよりを作れたらキスがうまいっていうよな」

「そうだっけ?」

「そういえばそうだな!そうすると、この俺様は誰よりもうまくできねばならんな!」

それから、みんな必死に口をモゴモゴさせ始めた。
わたしにもやってみろって言われたけど、丁寧に断った。

新開がはじめにできた!と舌をペロッと出して、こよりを見せる。
次に東堂も舌の上のこよりを見せてきた。

福富はまだ苦戦しているようで、無言でチャレンジしている。

荒北は…
あれ?
何もしてない。

「荒北!お前はチャレンジもせんのか!負けを認めるのだな!」

「ウッセ!」

「沙羅、オレが一番最初にこよりを作れたんだ。キスのご褒美、くれないか」

新開がそう言いながら、わたしに寄ってくる。

「ならんよ!それなら俺にも権利はあるはずだ!」

え〜
この流れだと、福富も言って来るのかな…?

それは困る…。
望まぬ人からキスを望まれたって…。
肝心の荒北は最初から何もしていないし…。

荒北はキスなんてどうでもいい、
いや、わたしなんてどうでもいいってことか。

なんか思わぬ形で失恋確定して、ショック。
あ、鼻の奥がツンとしてきた。
こんなところで泣いたら変だし、部室から出ようかな…。

なんてへこんでいたら、グイッと腕を引っ張られた。

「わわっ…!」

引き寄せられた先は荒北の腕の中。

なんで?


「狼はさくらんぼなんて食わねーんだヨ」

荒北はそう言って、わたしの肩をがしっと掴み、わたしの唇に食らいついてきた。

「〜〜〜〜〜っ!!!」

唇を話した後はわたしの腕をつかみ、

「オメーらはさくらんぼ食っとけよ。オレはこいつを食わせてもらうからヨ」

そう言い残して、部室から連れ出された。

後に残ったメンバーは

「ならん!ならんよ!荒北!!!」
「そりゃないぜ、靖友!」
「荒北!!」

と叫びまくっている。
遠ざかる彼らの声を聞きながら、わたしの腕を引っ張る荒北を見ると、耳が真っ赤になっているのが見えた。









***
あのあと、誰もいない裏庭で荒北の気持ちを聞かされ、付き合うことになった私たち。

さくらんぼを差し入れてくれた顧問に感謝。
さくらんぼの茎でキスの争奪戦になったから、新開達に感謝、かな?


さくらんぼ/fin


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