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世界とは残酷だと私は思う。
"私"と同じ『異常者』がいないこの世界。
異常な才能を与えられたその反動なのか、身体が思うように動かない。
健康体ではない、病弱な身体。


何にしても、いつまでもこんなシリアスをいつまでも続けていてはアレですね、悲劇のヒロインみたいなので止めておきましょう。
現実逃避を止めて現実に戻ろう。

きっといつも通り、アイマスクによって遮られた視界が見える筈―――。


「真白さん、大丈夫ですか?
また具合が悪いとか、」
「・・・・・・いいえ大丈夫ですヨ。
というより現実逃避位させて頂けませんか黒子君。
この状況に私はそろそろ吐血しそうです」
「・・・此処の椅子に座りましょうか」


この状況。
簡潔に言うと真白は男子バスケ部一軍レギュラーに拉致されていた。
幼馴染の黒子は付き合いが長い為、真白の顔色の悪さにすぐに気付いた。
文字通り顔面蒼白である。


「というより何ですかいきなり拐うだなんて。
目当てが身代金なら止めた方が良いですよ、値切られてしまいますから」
「身代金目当てって何なんスか!ていうか値切られるの!?」
「昔一千万円の身代金を要求されたのですが両親は五百でどうだと聞いてきた事があったので」
「酷過ぎるのだよ・・・!」
「皆さん騙されないで下さい、真白さんは誘拐された事なんてありませんよ」
「虫も殺さないような顔をして言う事がえげつねえ!!」
「息を吸うように嘘をつくな!」

いとも容易く行われるえげつなき行為。
淡々とした黒子とにこにこと笑う真白だけが通常運転である。
すっかり真白の言葉に翻弄された緑と黄と青は怒りに震えるが二人にとっては何のその。
暖簾に腕押しとはまさにこの事だ。

「まあ戯言は此処までにしておきましょうか」
「そうして下さい」
「それで私は何故此処に呼ばれたのでしょう?
くだらない要件でしたらある事無い事吹聴してやりますよ」
「止めろ」

人畜無害な笑顔を振りまいているが、わかる人間にはわかる。
この笑顔は作り物である事位。
心から笑っているところなど、ましてや怒っているところや泣いているところ等見た人間が果たして何人いるのか。



なかなかに混沌な空気が渦巻く中、割って入った人物が一人。
その行動だけでかなりの高等技術だと誰もが後に賛辞する事になる。


「お前達一体何をやっている」
「赤、」
「あら誘拐犯さんご機嫌麗しゅう。
とっとと私を解放してくれませんか、此方にも用事があるんですよ。
世界が貴方を中心に回ってる等という考えをお持ちでしたら今すぐ焼却炉に捨ててきて下さい(赤司君やっと来て下さったんですね)」
「・・・真白さん本音と建前が逆です、ていうか赤司君の周りの空気が寒々しいので謝って下さいお願いします」
(赤ちんの顔が怖い・・・!)

ガクガクと慄くキセキの世代を他所に真白の笑顔はブレない。
表情筋が超合金使用か何かじゃないのか。

「・・・黒神、お前の才能をオレ達の為に使ってくれないか?」
「・・・才能、ですか?」

質問に質問を返す。
此処でようやく真白の笑顔が少し崩れた。
一方で赤司は通常運転と言える、普段通りの表情に戻っている。

「お生憎ですが私は赤司君が求めているような才能なんてこれっぽちもありません。
何処にでもいるただの女子生徒です」
「謙遜をするな、お前は他者のプロデュースに長けているというその才能―――類稀なる『分析能力』がある事を知っている」
「・・・・・・あら」


真白はす、と紅茶色の瞳を僅かに細め、僅かな沈黙の後にぃ、と三日月型に口元を歪めた。
―――つまり笑ったのだ。
否、哂ったと言った方が正しいのだろう。
何せ今の真白の笑顔は普段の作り物の笑顔とは全く異なるモノだから。


「・・・・・・ふふ。何を言うのかと思えば。
赤司君・・・赤司征十郎ともあろう者が、こんなミスを言うなんて笑っちゃいますネ。
ああいえ、やはりこれも戯言でしょうね。
まあ知らないのだから当然の間違いなんでしょうけど・・・」
「・・・・・・真白さん?」
「丁度良いですし教えてあげますヨ。
私は"コレ"を『能力』と言った事はあれど『才能』なんて言った事はありません」
「・・・何?」
「これは『異常アブノーマル』であってそれ以外の何物でもありません。
そして更に付け加えるなら『分析』ではなく『解析アナリシス』です。
お間違いなきようお願いしますね」


そう言い終えるとまたにこにこと元の作り笑いに戻った真白。
その変わりように幼馴染の黒子でさえも一瞬ぞくりと身を震わせた。

「・・・黒神。
その『異常アブノーマル』とやらをオレ達に使って貰う事は出来無いのか?」
「緑間っち!?」
「・・・そうですね。
というより貴方達は其処ら辺の選手と比べても頭一つ分以上抜きん出ているのが嫌でも分かります。
なので・・・まあ黒子君は別として、貴方方は私の解析を受ける必要はありません」


ぐ、と黒子は幼馴染の言葉に顔を歪ませる。

確かに、確かに自分は彼等に遠く届かない人間ですが・・・!
もう少し言い方というものがあるだろう。
せめてオブラートに包んで欲しい。

黒子はどんよりと背中に暗雲を背負う事になった。

「・・・・・・我が部は優勝して当然という考えを持っている」
「・・・はあ」
「だが全試合快勝だったというわけではない、何度も危ない橋を渡っての、謂わば辛勝という結果の試合もあった」
「そうですか」

だからどうした、と言わんばかりの真白の態度である。
元々他者への意識が薄い事もあり、その反応は致し方ないとも言えた。

「勝利を磐石にしたい。
だからこそお前の力が必要なんだ。
マネージャーとして力になってくれないか?」
「・・・・・・」

赤色の真摯な瞳が紅茶色の瞳と交差する。
沈黙の末、彼女が口にした言葉は一つの問いかけだった。


「・・・・・・・・・・・・赤司君は、いえ皆さんはゲーム等はしないですよね?」
『・・・は?』

思いもよらない問いかけにまともに返事が出来た者は一人もいなかった。

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所詮ネタなので書きたいシーンをすぐに書こうと思った結果がこれです。
一気に飛んだとか思わないで頂けると助かります


20140615