すぐに着ぐるみの一団がやって来て、僕とリリイの手を取り歩き出す。熊が太鼓を叩き、猫がトランペットを吹く。栗鼠がフルートを奏で、鰐が鉄琴を鳴らす。兎の歌に合わせてリリイも上機嫌でハミングしている。鸚鵡に手を引かれる僕は素直に楽しんでいいのか分からなかった。
 パレードは夜空に浮かび上がる城へと向かう。ヨーロッパの城を模したアトラクションだ。
 パレードの一団は入城し、天まで続く螺旋階段をのぼっていく。着ぐるみの動物たちが演奏する音は場内に反響し、幾重にも重なって不協和音になる。先を行くリリイは、さっきまで歌姫のようだったのに、今は魔女みたいになっている。
 螺旋階段が終わりを告げ、リリイと僕はテラスへ出た。音楽が消えるとともに、着ぐるみたちも煙のようにどこかへ消えてしまった。
 塔の先に突き出たテラスから臨む外は、街の灯があるはずなのに暗闇しか見えなかった。あんなに輝いていた遊園地の電飾も、一つも見いだせない。
「そんな端に立つとあぶない」
 強い風にあおられるリリイに、僕は手を伸ばした。柱につかまり腰を低くしないと飛ばされそうな風なのに、リリイの体はびくともしない。真っ直ぐ立って僕を見つめている。





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