「次は私のおすすめだよ」
 そう言ってリリイが僕を連れてきたのは、お化け屋敷だった。古めかしい和風の外観で、血の赤や柳や提灯などが飾り付けられている、よくある感じのものだ。
 ……と、冷静に分析してみるが、実はこういうのが大の苦手だ。
「僕はここで待ってるから、きみ一人で行ってきなよ」
 なんて、情けなく提案する僕など構わず、リリイはにこにこしている。
「一緒に行こう。私の友達もいるんだよ」
 そう言って、怖気づく僕をうきうきと鼻歌まじりに引きずっていく。この中に友達がいるというけど、とてもそうは思えない。さっきまで廃遊園地だったこの場所に、人なんかいるはずないじゃないか。
 入った瞬間から、おどろおどろしい演出が始まる。怖さを盛り上げる効果音が響き、びっくりさせられる仕掛けが次々飛び出す。いちいち体が反応してしまうが、リリイにしがみつくことだけはなんとか我慢する。
「こんばんは」
 突然リリイが声を上げたので、僕は飛び上がった。リリイの陰から彼女が呼びかけた方をうかがうと、数人の人が微笑みながら近付いてきた。
 いや、彼らは人ではないようだった。透けていたり、目が斜めに三つ付いていたり、足が無いのに歩いていたり。つまり彼らは生きた人間ではなかった。
「この人たちが私の友達。ここに住んでるんだよ」
 リリイは僕にそう紹介したが、彼らの見た目の恐ろしさにおびえたらいいのか、幽霊がお化け屋敷に住んでいる状況に笑えばいいのか、混乱してしまった。




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