生かされている幼い狼[3]



 無謀な家出を計った彰は、同年代の子供たちの中でもとりわけ目立つ小ささ。未就学の幼児のように小さく、華奢な体格をしている。

 これでも彼は7歳。幼いと言っても頭脳は小学校高学年のレベルなどは軽く飛び越えており、知能の発達も著しい所謂《天才》である。

 人生経験は人並み…いや少々人並み外れた経験はしているかもしれないが、それほど飛び抜けてもいない。見た目と勉学以外は至って年相応であった。


 数年前。とある事情から親元に居られなくなった彼は、その知性と容姿の美しさを買われ、少々後ろ暗い仕事を生業とする経営者によって拾われた。

 衣食住に不自由は感じず、通常の教育も受けさせてはもらえる環境。しかし実際の食事量は、生きて行くのに支障の出ない最低限度に抑えられ、華奢な見た目を保てるよう管理されていた。

 彰は理解していなかったが、それは明らかな虐待。彼の将来に何らかの目的を持って行われている事実であった。

 育ててもらっているのでは無い。生かされている。

 幼いながらも、少なからず其れを感じているからこそ、彼は逃げ出すのである。



 先ほどまで痛い程の勢いで降り続いていた雨は、そろそろ止もうかという雰囲気になっている。

 車の外では大人の男たちが、雁首揃えて彰をどうすべきか話し合っているようだ。

 大きな身体の椋橋と、眼鏡の男、そして一舞の他に、マネージャーらしき男も一人増えた。

 いったいこの男たちは何者なんだろう。

 彰は少しだけ不安を抱きつつ、自分の居場所が里親にバレない事を必死に祈っていた。



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