私と幸村は目の前にいる、赤也を信じられない、とでも言いたげに目を開いて見ていた。
もう、口裂け女はいない。



「ぇ、・・・あの、赤也・・・?」
「はぁっ、はぁ、・・・〜ッ名前先輩いぃ"い"」

先ほどの必死にポマードと叫んでいた後輩は真っ青だったかと思えば涙を溜めた目で抱きついてきた。
私は頭が追いつかないながらも、ふわふわして、癖のある絡まりやすい髪の毛に手をとおした。すると赤也はわんわん泣きだしてしまう。

だけど、ここには一応もう一人いるのだ。



「赤也、俺を無視しないでくれるかい?」
「幸村部長うう!おっれ、やな、ぎっ先輩達、とはぐれて、・・・!」

はぐれたのか、こんな所で。
こんな不気味な所ではぐれられる赤也を私は褒め称えたいよ。
さっきまで2回も遭遇した恐怖からか頭が頭が回らない、・・・そうだ、さっきまで死の恐怖と得体のしれないものへの恐怖で支配されていたんだ。

それなのに、この後輩君は現れて2分ともせずにそんなものを吹き飛ばしてくれた。
自然に頬が緩むのを押さえずに泣きじゃくってる赤也を教室にいれて抱きしめてやる。

頭を絡まないように、丁寧に撫でながら。

(怖かったよね、一人でこんな薄暗い学校を歩きまわって、・・・ううん、得体のしれないものに私達のように追いかけられたかもしれない。)

そんな一人だった少年の為に私とせーちゃんが癒してあげようじゃないか。
何時襲われるか分からない場所では少し気を許せないが、せめて心のケアぐらいはしてあげよう。



「というか、赤也」
「はぃ"?」
「うわっ、酷い顔!じゃないよ・・・ええいっ!うっとおしい!柳達もきてるの?」

私が思わず酷い顔って言えば赤也はまた酷いっス!と嘘泣きをし始めたが無視だそんなの!
今はそんな状態じゃない。
柳達がいるのなら早く合流しなくては、彼らも危ないんじゃないだろうか?
私は幸村にこの後どうするか聞くために幸村の方に顔をあげれば幸村は目を見開いていた。



「柳達も、ここにこれた・・・?」

(そんなの、無かった)

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