とりあえずあの後皆がいないから探そう、ということになった。
私はそれに同意して今、幸村と手を繋ぎながら歩いてる。

あれから幸村が離れたがらないのだ。
いつもはあまり自分の我侭を言わない人だから私も喜んで手を繋いだ。
そのときの幸村の安心した顔がまだ、忘れられない。

きっと、心配を掛けたんだろう。幸村がそこまで取り乱すほど。
そこまで私の存在が大きいのがうれしいとも思うが、
心配を掛けて後ろめたい気持ちもある。
だから私は握る手を離さないで幸村と歩いてるんだと思う。
暫く沈黙のまま、足音だけが響く廊下にひとつの音が加わった。



ずる、ビチャ、ずる、ビシャッ、ずるっ、ビシャッ、



と何か水々しいものを引きずってるような音だ。
だんだんこっちに向かってるのが分かる。

しかも、その音が近づく耽美に体の中の恐怖があふれてくる感じがする。
なんなの?この音は。誰が出してる音なの?

チラッと幸村の顔を見れば幸村もよくないことが分かったんのか険しい顔をしてる。
そしてぎゅっと手をさっきより強く握った。


でも音はこっちにやってくる。
もしかしたら人かもしれないのに、皆かもしれないのに
私と幸村は音がする方向から反対方向に走っていった。



「ゃあ、っ」


振り向く直前に見えたのは、
薄暗い廊下からの先から見える、下半身がなく臓器が丸出しになり
白く綺麗な廊下には映える、黒い長い髪の毛を血で固まらせて
その隙間から見える青白い手と顔、顔は、ニタァと赤い口を上にゆがませて笑う女の人だった。

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