「っ名前!?」
「一体何が・・・、ぇ」


柳生が、がちゃりとトイレのドアを開けたらそこは一面あり得ない程に朽ち果てていた。
くもの巣は張り巡らされ、あちこちに血が飛び散り、壁は腐っていた。
いくら女子トイレに入ったこともない俺でもこんな事はあり得ない事は分かる。
でも俺はその事に何ふりかまわず、片っ端からトイレのドアを開けた。
ひとつだけあかないトイレを見つけて必死に叩く。




「名前ッ!!返事をしんしゃい!」


何処を叩いても返事がない。
柳生が、トイレ用具に入っている緊急用のカギを取り出そうとするが
見るからに腐ってるドアは
体当たりを一回だけするだけでメキメキと音を立ててドアが開く。



「名前っ、名前・・・、」


そこで俺がみた光景は一部のトイレの壁が何かを吸収したようにぐにゃりと曲がり、
一面に血が飛び散っている光景だった。



「に、仁王君、これ、はっ」
「柳生・・・」



俺は幸村たちに伝えろ、と伝えたかったがヘタリと座りこんでしまった。
柳生は俺の言葉が聞こえたのか、それとも察したのか幸村たちを呼びに走っていった。
俺は、まだこの血が名前のじゃないかもしれない、と分かっていても
ボロボロとこぼれる涙を止めることはおろか、拭うことさえも出来なかった。

(あの時俺が少し我慢出来ないか、と言えていたら。)



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