ガタガタ、あれから少し気づいたが、少しづつ確実に机が"ずれている"。
ドアの隙間も、最初は指先が入る位だったが、指がすっぽり入るほど開いてる。

このままではやばいだろう。この結界も持たないはずだ。
私は幸村に「机を抑えるか、元の位置に戻そう。」と提案したが、
「元の位置なんて印もないから分からないし、抑えるのも無駄だ」と返されてしまった。
だったらこのまま入って殺されるのを待つしかないのか、それはいやだ。
そういいたかったがいえなかった。

幸村も、あせっていたから。

これだけ冷静な判断を今までし続けたが、あせらないはずがない。
いきなり命の危機に瀕しているのだから。

だけど、そんな状況ですら、私の前に立ち守ろうとしてくれてる。
そんな姿に私は昔の幸村を思い出した。



「せぇ、ちゃん、」
「・・・懐かしいね、その呼び方。」

"昔"?幸村にこんな風に守られたことはあったか?
いや、幼馴染だけども、昔は幸村はいじめられっこで、よく泣いて私の後ろにいたはずだ。
だから逆はあっても、そんなこと・・・。



「・・・あの日と変わらず、"俺が、守るから"」

あの日?いつの日だ。それは。
何故幸村はそんなにも自分を危険にさらして私を守ろうとするのだ。
逃げよう、一緒に逃げたらいい。

どうにかして口裂け女をまた振り切ればいいじゃないか。
お願いだから、どこにも行かないで。

私はそんなことがどんどんあふれて行って、気づかないうちにまた涙としてあふれていたらしい。
だけどそんなの知らない。幸村、お願い。守らなくていいよ、
一緒に逃げよう?どこにも行かないでよ。守らないでいいからさ。お願い。



「せぇ、ちゃんっ!!」
「ポマアアアアアド!!!」
「ギィヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

私が、幸村の服の裾をつかんで昔のあだ名で呼んだのと同時に
意味が分からない、でも聞き覚えのある声の叫び声が聞こえたと思うと、
ギィイインッと響くような悲鳴が急に上がった。

私の幸村は目を丸くして口裂け女のほうを見ると、そこにはもう口裂け女の姿はなく、
変わりに2年生エースの切原赤也が真っ青でゼィゼィいいながら立ちすくんでいた。

(君は一人かい?)

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