私は跳ね飛ばされた椅子を信じられないという表情で見る。
だってそうだ、普通窓に当てだけであそこまで跳ね飛ばされないし、
跳ね飛ばされるほど強く当てたとしても、窓ガラスなんて脆い物、すぐ割れてるはずだ。

だけど、事実は違う。
跳ね飛ばされた椅子は壁にあたり、壁には傷さえ、つ・・・い、て、る・・・?



「ひっ!!」
「、どうした・・・!」

私が椅子に目をやろうと振り返ると教室のドアのガラスに、先程から私達が逃げ回った口裂け女がへばり付いてこっちを恨めしそうに見ていた。
それに私が口裂け女に気づいた瞬間、口裂け女と私は目がバチリと音がしたぐらい会ってしまい、ニタアッとマスクからはみ出す位大きく笑った。

それは、あまりにも赤く、赤く赤く赤く赤く赤く赤く赤く・・・・。
血の粘り気のせいかドロッとしていて、肉が無理やり裂かれているのでギザギザで
口角の高さが左右とも違う。

―――――なんて、悲しくて、無残な姿だろうか。



「・・・こっちには入ってこれないみたいだね」
「よっ、よかった・・・!」

口裂け女は幸村の言うとおり、
ガリガリとドアを長いつめで引っかいてるだけで、教室には入ろうとはしない。
なぜ?それは分からないが、恐らく入れないのだろう。

私が恐怖で震える体をまずは落ち着かせようと、
机に寄りかかろうとしたら幸村に厳しい口調で「触るな!」と怒鳴られる。
それにビクッと反応して思わず机をずらしてしまう。

すると口裂け女はガラ、とドアの隙間に指を入れた。



「!!」

私は入ってこられると思い数歩後ずさりをした。
だけど口裂け女はそこまでしか入れないのか少し出来た隙間に両手の指を入れてガタガタと激しくこちらに入ろうとしてきた。

それをみて幸村ははぁ、と安堵からくるため息をつくと私を見た。



「おそらく、この机の配置はあいつら化け物から身を守る結界をはる為におかれた配所なんだ。
 椅子なら動かしても平気みたいだけど、机は動かすな。」

そういう幸村の雰囲気がいつもと違って殺し合いでも始めそうなほど
追い詰められていたから、私はだまってうなずいた。

(貴方が一瞬でも怖い、だなんて)

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