「ゆっ、ゆきっ、むっ・・・!」
「いいから走れ!」



私が恐怖で足がもつれついてるのに、幸村は冷静に走ることに集中する。
私は半場幸村に引きずられるように走り、転ばないようにするのに必死だ。

後ろの人間とは思えない半身の女は手だけで走行してるようで
後ろからは、ビタビタビタ、と凄い速さで音が聞こえてくる。



「テ、ケテケテケ」


行き成りビタビタビタという音が変わり、
走行音がテケテケ、という不思議な音に変わった。
私は、このテケテケ、という音に聞き覚えがあった。

(もしかして、これってテケテケ・・・?)

女の招待に気がついてそっちに意識が向いてたせいか、
私は廊下のつなぎ目の出っ張ってるところに足を引っ掛け盛大に転んでしまった。
幸村を巻き込んじゃいけないから咄嗟に幸村の手をはずして。




「名前ッ!?」
「幸村!この女、多分テケテ、ケ」



ドサッ、と私の上に何かが被さるのが分かる。
まさかと考えなくても今までの流れでソレが何かか分かる。

テケテケだ。

上から笑い声なのか泣き声なのか分からないけど、テケテケと軽い音が聞こえる。
私はせめて恐怖から逃げようと目をつぶり姿を見えないようにするが
テケテケは私の首に手を絡ませてきた。

ヒンヤリとするその手は生きてる人のものじゃなくて、悲しくなった。
私はもうすぐ死ぬのかな。
そう諦めて来るだろう痛みに構えていたら、ふっと重みが消えた。



「え、」
「名前、この先の階段でまってるからッ!」


テケテケは、私の上からどいてて幸村を追っていた。
何で、そんなことを考えながらテケテケと幸村が走っていった方向に私も足を進めた。

(テケテケの性質を偶然知ってただけなんだよね。)

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