P3リアルタイムメモ。



2009.10.03(Sat) 20:43


「相変わらずシンジの部屋は片付いているな」
「まあ、アキの部屋よりは片付いてるだろ」
「と云うか物が少ない」
「そうだな」
「……この前、」
「あ?」
「ナイフ、あげてたな」
「あー、…ああ」
「大事なナイフ、だったんじゃないのか?」
「別に。どこにでもあるナイフだ」
「だがいつも持っていた。ほとんど持ち物のないシンジがずっと持っていた物なんて、あのナイフくらいじゃないか?」
「たまたまだろ。捨てる理由もなかった。あると便利だしな」
「大切にしていたように見えたんだがな」
「気のせいだろ」



(本当に…ただの気まぐれなのか…?)




2009.09.17(Thu) 20:12


何に使うかは知らねえが、そう云いながら手渡されたナイフを見下ろす。
どこにでもありそうな、ごく普通のナイフだった。荒垣先輩もそう思っているらしく、「返さなくていいからな」と例の如くぶっきらぼうに云うとカウンターの席に戻っていった。

エリザベスはこれできっと納得してくれるだろう。
だけど、このナイフをこのままエリザベスに渡してしまうのは、何故だかひどく惜しい気がした。
綺麗だけれど、新しくはない。もしかしたら荒垣先輩の愛用しているナイフなのかもしれない。そんなナイフを貰ってしまっても良かったのだろうか。


一部始終を見ていた真田先輩が、難しい顔でグローブを手入れする手を止めていたというのを、後から山岸から聞いた。




2009.09.06(Sun) 01:03


順平に何と声をかけたらいいのか分からない。

今までの俺だったらたぶん、何を云えば分からないなら、何も云わなければいい、と思ったに違いない。それは間違いじゃないと今も思う。でもそうしたくない自分がいる。

無言のまま去っていく順平の背中を見送りながら、俺には何が出来るのか考えてみた。

いつだって人は自分のことで手一杯で、他人のことを気にしている余裕なんてない。自分のことも分からないのに、人のことが分かるなんてことも思ってない。
でも、だからって、何も出来ないってのは違うんじゃないか。最近はそんな風に思ったりする。何か、少しくらい出来ることがあるんじゃないかな。


(例えば……)




2009.09.05(Sat) 21:32


大型シャドウと戦うのも、今日で6度目になるらしい。
数にしてみるとそれが多いのか少ないのか、よく分からない。振り返るのは至極簡単。けれどなんとかここまで来た、という気もする。
残りは4体。12体全ての大型シャドウを倒しさえすれば、全てが終わる。先の見えない話ではない。


最近、よくファルロスの言葉について考えている。
「終わりがくるよ」
それは一体何を示しているのだろう。

彼は最初に出会った夜に、「自分の選んだ選択には責任を持つように」と云った。選んだ選択から逃げていると思ったことはないけれど、どうなんだろう。責任を取れているのかどうかは、正直分からない。
ファルロスの云う、いつか来る終わりに、俺はちゃんと立ち向かえるのかな。
多分、今の気持ちを表す言葉はただひとつ、不安。
大型シャドウを全て倒すことがファルロスの云う終わりなのか、そうではなく別に終わりがあるのか。ファルロスはいつだって困った顔をするばかりで明確な答えは示してくれない。云い様のない不安ばかりが膨らんでいる。


先日、真田先輩と天田の会話を聞いてしまった。
真田先輩はシャドウと戦うのを楽しんでばかりいるのかと思ったけれど、どうやらそうではないらしい。荒垣先輩も戻ってきて、真田先輩が気にかけることなんてもう何もないと思っていた。いや、真田先輩に云わせれば、俺の方が何も抱えてないように見えるらしいから、やっぱり真田先輩だって得体の知れない不安を抱えていたりするのかもしれない。
不思議と人は自分ほど他人は悩んでいないと思い込んでしまうけれど、それはきっと間違っている。誰だってどうしたらいいか分からなくなって、思考が堂々巡りをして、前に進めなくなっているんだ。そんな単純なことに、突然気が付いたりする。自分一人じゃないんだ。多分、そんな風に思ったことは、今までに一度もない。

こんな時、今みたいなこんな時、一体どうしたらいいんだろう。どうすればいいんだろう。
順平ならなんて云うかな。帰ってきたら訊いてみよう。




(なんだか…、)(なんだか、ひどく嫌な感じがするんだ)




2009.08.29(Sat) 22:35


「満月の夜に大型シャドウ…か」
「どうした、天田?」
「いえ、月を見てたら…なんとなく」
「そうか。そういえば天田は次の満月が奴らとの初対面になるな」
「はい」
「…気が付くと、月の満ち欠けばかり気にしている…嫌なもんだ」
「お月見って気分じゃないですね」
「月見…そうだな、今は満月を見るだけで気が滅入りそうだ」



(いつか月を疎ましく思う日が来るかもしれない)
(冗談半分で僕はこの時、そんなことを考えていた)







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