これの続きです。







「じゃじゃ〜ん!見て!コレ」

「…」

「ネットで見つけたんだけどね、すごいよね!この耳栓、目覚まし機能ついてるんだよ!」

「…」

「と、言うわけで。朝までごゆっくり?」

「…やめてよおおおおおおそーゆーのおおおおおおお!」








明日は、バトルサブウェイの定期車両点検日。


あれからだいたい一週間。
私とノボリ兄さんは、暗黙の了解のように明日の予定は入れなかった。

つまり、その、…そういうことなんだと、おもう。







「お鍋にカレーいーっぱい作ったくせに〜」

「うるっ、うるさい…!!」

「ふふふ、ナマエかわい〜い。だいじょうぶだよ〜ぼくごはんは炊けるから!」

「やめ…ほんとにからかわないで…」


時間は、いつものごとく団欒タイム。
今日のお風呂の順番はクダリ兄さん、私、ノボリ兄さんで、今最後のノボリ兄さんが入浴中だ。
一人でいるのも色々と考えてしまうから…リビングに居たんけど、これなら部屋に居ても恥ずかしさの度合いは変わらなかった気がする。

あの日から、家族公認(?)で私とノボリ兄さんは付き合っている…わけなのだけど、クダリ兄さんが面白がって容赦なくからかってくるから、私は精神が擦り減り気味だ。
ああやめて本当恥ずかしい死ぬ。


「あはは。うん、このへんにしとく。これ以上はノボリに怒られちゃうもんね」

「ええ、その辺にしておあげなさい。」

「…えっ?…ちょ、は、早かったのね…!?」


声をした方を見ると、お風呂上りのノボリ兄さんがリビングのドアを開けたところだった。
…なんかこれって、まるで…


「はい。先日のデジャヴュ感を味わっていただこうかと思いまして」

「思いましてー」

「また共犯なの!?」

「ふふふ〜!ポケモン、出してないでしょ?」


…このしてやったり顔殴りたい。
何食わぬ顔でミネラルウォーターを飲んでるノボリ兄さんも殴りたい。

ええ思ってましたよ。先日と同じように、ノボリ兄さんがお風呂から上がる前に部屋に下がろうと思ってましたよ。
…まあ今日は、下がる部屋が…違うんですけど…


「では!おやすみ!」

「…おやすみな「おー!すごいほんと何も聞こえない!」さい…」

「おやすみなさいまし、クダリ」


…去り際のクダリ兄さんの背中を叩いた私に罪は無い。


「どうぞ」

「えっ?あ、ありがとう…って、何?お水?」

「はい」


ノボリ兄さんが私に手渡したのは、水の入ったグラス。


「…喉は、渇いてないけど」

「一口二口でも飲んだほうがいいですよ。汗をかきますから」

「……」


…もうやだ。





黒基調の家具で揃えられた、ノボリ兄さんの部屋。
間接照明のみが照らす仄暗い部屋は、昼に出入りする時とは全然表情が違って……どうにも、これからすることを意識してしまって、一気に心拍数が跳ね上がる。


「…ナマエ」

「……笑わないでよ…」

「すみません。あまりに可愛らしいもので」

「…そ、そういうことも言わないで…」


セミダブルサイズのベッドの縁に腰掛けるノボリ兄さんに手を引かれ、膝に座るよう促される。
……隣じゃ駄目ですか。


「緊張しますか」

「…しないほうが、どうかと思う」

「…キス、しましょうか。」


ノボリ兄さんの膝に座ると、目線はだいたい同じで。すぐ目の前に、兄さんの灰色の瞳がある。
私と全く同じ色をしたそれは、今は照明によってうっすらオレンジ色に染まっていて。

私の瞳も、今はオレンジなのかなって思った。


「ん…」


控えめなリップ音を立てて軽く触れ合う。
ノボリ兄さんの唇は、時々逸れて、私の顔の至るところに熱を残していく。
頬、鼻先、瞼…そしてまた唇に戻ってくる。

…キスは、あの日から、ちょっとしたときにしている。
一緒に暮らしているのだ。二人きりのタイミングなんていくらでもあって。


「っは…ん」


私が息を切らしたら、深くなる合図。
あの日とは違って、ちゃんと一呼吸待ってくれるようになった。…けど。


「ん…む。ぅ…っふ」


息苦しいのは、あんまり変わらない。触れ合うだけのキスは何度もしたけど、ディープキスは片手で数えられるくらいしか、まだしてないし。
…お互い、いっぱいいっぱいになっちゃうから。

あ、あ、…ゾクゾク、きた。


「ふっ、ふ…、ん」


私の腰に添えてる兄さんの手が、ゆっくり、下がって…骨盤あたりから、また少しずつ、パジャマの布地を押し上げながら上がってくる。途中で布地がこぼれて、兄さんの手が私の素肌に触れる…服の中に入ってくる。
大きな手が、脇腹や背筋を滑るように撫でる。

…胸、の、…先が、チリチリする…。
さ、わって…欲しい。…けど、兄さんの手はお腹とかを触ってくるばかりで、ブラジャーを外してくれる気配は、無い。
胸のすぐ下の、肋骨のあたりまでは、触ってくるのに。


「あ、っん、に、にいさ…っぁ」

「こら。違いますよ。」

「…は、はぁ……ノ、ボリ、さん」


あ。お互いの口から、銀糸が伝ってる。
…変なの。なんだか本当に銀色っぽく見える。


「何ですか?」

「…っ………な、なんでもない…」


兄さんの、しっかりとした声音にハッとなる。
な、なに考えてるんだろ私。


「続けても?」

「…はい」

「では、ナマエ。腕を」

「あ、こ、こう?」


促され、ノボリ兄さんの首元に両腕を回す。…あの日は振り払われたっけな。


「ん」


再度唇が、舌が触れ合う。吸われるときもちいい。
…あ、兄さんの手が、背中の…ブラのフチをなぞってる。も、ちょっと。
親指が、肌とのスキマに入り込んで、ホックあたりを弄ってる…あ、片手じゃ、外せないのかな。


「…素直ですね」

「…っへ?」


え、あれ?キス…は。……って!


「えっ!?」

「背中ばかりに、意識が行きすぎですよ」


い、いつのまにかパジャマのボタンが全部外され、て…


「ひゃっ!」


ぱちん。
時間差でブラのホックを外された。咄嗟に、兄さんの首に回していた手を解き、前を隠す。
な、ななななな何この人!?


「ほら…脱いで、見せて下さい。寝てしまったら脱ぎにくいですよ?」

「っみ、見せ…!」

「さ。」

「あ、っふ!」


ここでまたキスしてくるし!
兄さんは器用にパジャマとブラをわたしから取り浚い、フローリングの床に落としてしまった。
そのまま横抱きに抱え上げられ、ベッドに下ろされる。


「っや…!」

「…ここに来て、何故隠すのです。先程まであんなに触って欲しそうにしていたというのに」

「え、う…き、気付いてたの…!?」

「あんなに可愛く蕩けた、物欲しげな顔を…男が見逃すとでもお思いですか…。ほら、観念なさい」

「あっ」


手首を掴まれて、頭の上で一つにまとめられた。
だっ、男性って力も強くて手も大きくて、ずるい。


「…白いですね」

「ひゃん!」

「ああ…良い声です」

「…っの、ノボリさんそれ変態っぽいよ…」

「男は皆変態ですよ」


空いてる方の手で、掠めるように触られる。さっきまで感じてたチリチリがビリビリになって、電流が流れてるみたい。


「…っは。あ、あ…な、めないで」

「嫌でございます」

「や、あ。い、息が…」


舐められて湿ったところに、息を吹かれて…それもゾクゾクする。冷たいような、生暖かいような、変な感覚。
あ、ていうか、ノボリ兄さん結構息荒い…。
胸にキスの雨が降る。兄さんの鼻先が乳首を掠めると、きもち、よくて…。それを期待してる自分がいる。

いつの間にか私の手は開放されてて、兄さんは両手で私の胸を弄くっている。
持ち上げられ、包み込まれて、揉みしだかれる。気持ち良いけど…これはマッサージみたいな気持ちよさかも。
そんな風に思っていたら、いきなり乳首に爪を立てられた。


「っあ!や、えっ…ぁ、や、やだ!」


ぐりっと親指で押し出され、摘まれる。結構強く摘まれてるのに、い、痛くない…!?
そ、それに…ひっ、膝で…あ、あそこをぐりぐり押されて、お腹の奥がきゅんきゅんしてる。


「…気持ち、いいのですか」

「えっ、あっ、わ、分かんな…!で、でもそれやだ、やめ」

「…そうですね。そろそろこちらも触りましょうか」

「ひぁっ!」


パジャマのズボンをずり下げられ、内股の隙間に手を差し込まれて、咄嗟に足を閉じる。


「…逆効果ですよ?」

「ひゃ、あ、あっ…」


ぐ、と指圧されて、腰が逃げる。しかし以外にも兄さんはすぐ指圧の指を放して…今は内腿を撫でている。
…い、今のは、ちょっと。


「腰、上げますよ」


膝裏をぐいっと持ち上げられると腰が浮いて…ショーツはそのままにズボンを膝上まで落とされた。するっと、足から抜ける。


「…最後の砦、ですね」

「っそ、そういうのいいから…!」


なんかもう、さっさと脱がして欲しい。逆にそのほうが恥ずかしくない気がする。


「おや、いけませんよ。いいですか?わたくしはこれから、ゆっくりと脱がせます。その間、想像してください」

「な、何を?」


問うと、ノボリ兄さんは私の耳元に顔を寄せ、低く、囁くように呟いた。


「…これからわたくしと交わるのだということを」

「は…」

「自分で、思い描いてください。気持ちの良い様を。わたくしのものが…ここに、入って」

「ひぁっ!」

「溶け合う様を。」


ついっ、と兄さんがショーツの上から敏感な部分を撫でる。
っそ、想像…って…!!


「ほら、脱がしますよ」

「あ、あっ、ま、待って…」

「待ちません」


お尻の…方から手を差し込んで…ちょっとずつ、ちょっとずつ、ショーツがずらされる。
ゆっくりだから、布がちょっと丸まっちゃってて…


「っあ…」


普段殆ど外気に晒されない箇所があらわになって、そこに風を…空気を、感じた途端。
きゅん…っと、したと思ったら、そこからどくどくと脈打ち出した。

ショーツは今、太ももの真ん中あたりだ。


「え…あ…な、なに…これ…!」

「…想像、出来ていますか?」

「わ、分かんない分かんない!」


顔を横に背けて、シーツを掴む。足も、ぎゅっと閉じる。
ノボリ兄さんの顔も、自分が、その…脱がされている様子も、とても見れない。


「ああ…合格ですね。ほら、脱げましたよ」

「え…」

「足に入れた力を、抜いて下さい」

「っや…!」

「力づくで開くことも出来ますが?」


…あ。ノボリ兄さんが上、脱いだ。
ちゃんと筋肉付いてて、均整の取れた綺麗な体。


「ほら、どうします?」

「…あ。っえ、えっと…」


力づく…そ、れは…嫌かも…。
兄さんの手は、折り曲がった膝の、ぴっちりと閉じた膝頭に置かれている。
ゆるゆると力を抜くと、ぐいっと、膝を割り開かれた。

…そこに、改めて外気の、冷たさを感じる。


「…っ〜!!」


み、見られてる。思いっきり見られてる!
や、やめてやめてやめて…!そんなとこ見ないでよ…!!


「…っふ。びちゃびちゃ、ですね…」

「ふ、ぁん!」

「ローションも…一応用意しましたが、これなら不要かもしれませんね」

「っう…ん、ん、」

「ですが…ナマエ?初めて、ですね?」

「ぁ、っは…い…」

「………っは。そう…ですか。」

「っふ、あ…の、ぼり…さん?」


私のそこを、指の腹で撫でていたノボリ…さんが、手を止めて覆いかぶさってきた。
…乱れた息を、整え、たいんだけど…お、重い…。
それでも、シーツを掴んでいたために下敷きにならずに済んだ手で、ノボリさんの頭を撫でる。
…いや。なんか他にどうしていいかわかんなくて。



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