Épelons chance | ナノ



71.アリアは歌い、眠る




緑生い茂る森の奥の奥。


あの日から変わらず残り続けている、藁や草のクッションを見つめてじっと動かない少女。
彼女の隣で同じ場所を見つめる魔物が二匹。うちの一体が身体を擦り寄せて鼻を鳴らした。


桃色の髪を撫でるように鼻をこすり付けたライガの頭を、少女は巣から目を離すことなくそっと撫でる。
ライガは瞬きひとつしない少女を振り向かせるように、また、鼻を鳴らしながら頬を舐めた。



 ―――



小さな物音が耳を掠める。
それと同時に、大木の枝に止まっていた鳥が羽ばたいた。

すん、と鼻頭を動かしたライガの表情が変わる。
もう一体の魔物も、木が避ける通り道へ顔を向けた。


ライガと同じ動作で、小さな少女も自分と違うものの匂いを受け入れて、目を閉じる。

ぎゅっと、手に握った人形を抱きしめて。




「やれやれ。待ちかねたぜ」




離れた場所で、音も立てずに世界に溶け込んでいた巨体が動く。

静かに開いた瞳は振り返った先に影を捉えて、世界に色をつけた。


「待ちかねた………です」









71.アリアは歌い、眠る









 


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