Épelons chance | ナノ



56.喝くれて俯れた唇また朱き




雪が止んだ。

山の向こうから顔を覗かせた太陽が銀色の街に光を浴びせかけた。
陽に照らされた雪が真っ白に光り、まるで足元から発光しているよう。

いつもは隠されている雲の上も、朝日に焼けて薄青く、それでいてどこか濃く、まるで水彩画。


雪が止んだ。

風も止んだ。


視線は、この世界の果てであり、始まりの場所。


眠らないハズなのに、この街の朝は音もなく静かなの。知っているわ。
大好きな街だから。大切な街だから。

この街に住む人も、動物も、今日が終わったらまた明日の朝には同じように息を潜めて眠りにつく。


この景色を変えさせなんてしない。


眩しいほどに照らしてくれる太陽に。

雲。

風。

あなたたちは、結末を見た希望?


大丈夫。
きっと知っているの。


この足跡が残る限り、わたしの帰る場所はここなんだよね。









56.喝くれて俯れた唇また朱き








 


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