Épelons chance | ナノ
50.第六が告げる音
50.第六が告げる音
ユリアシティの会議室。
キムラスカ、マルクト両国の主要人物が机を挟んで向かい合う。
キムラスカ側には国王インゴベルトの隣にナタリア、そしてファブレ公爵も椅子に座り、その裏側には大臣たちも顔を揃えて佇んでいる。ミカルもマルクト側の椅子に座り、隣はピオニーとジェイドに挟まれていた。
なんとも静かな会議室には、決して相いれることのなかった顔が並ぶ。
広いとは言い難いこの部屋には椅子の数以上の人間が立ち、その情景を見据えている。
仲介役として仰せつかったユリアシティのテオドーロ市長の後ろに、それを見守るようにルーク、ティア、アニス、イオン、ガイも一様に参観していた。
「……ではこの書類にお二人の署名を」
テオドーロの手から、平和条約の誓約書が手渡される。
干渉、労働、協力……様々な事項が記されている書類は、びっしりと文字が並べられていた。
その内容をじっくりと読み終えたピオニーとインゴベルトは、傍らに置いてあった羽のようなペンを使って自筆のサインを書き記す。
「…結構です」
筆を置くのを確認したテオドーロが目を配らせて言う。
目の前のナタリアが安堵の息をもらした。
ミカルもそれを見て、やっと和平が実現したんだ、と口元に笑みを揺らす。
ジェイドが初めて旅立ってからどのくらいが経っただろうか。初めのうちは心配で仕事どころではなくて、いつの間にか自分も共に行動していて。
果報は寝て待て、というが、どれほどこの時を待ちわびたのだろう。
「それではこれをもって、平和条約の締結といたします」
静かな空間にテオドーロの声が行き渡った。
全員が全員、喜ばしい事実ではないのかもしれない。それでも、歓喜の空気が部屋中に広がった。
安堵が木霊する会議室。
しかしその雰囲気は、意外な人物の手によって途切られた。
「――ちょっと待った」
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