Épelons chance | ナノ



49.儚くも蕾




「不在中に届いた書状に対する返答を、出来うる限り本日中にとのお話でして」

「ティアーニ様、こちらの書類もお願いします」

「近日中にデント伯爵より会食の申し出がございましたが、如何なさいますか?」

「ミカル様!先日報告のあった第三師団の件について、お伺いしたいことが…」

「姫様。上層部より、終戦会議に出席するにあたり、幾つか用意していただきたい書類があるとのことです」






「………はぁ……」



アルビオールの白い羽根を見送って、仲間たちがいなくなるやいなや、ミカルはメイドと執務官に連れられて自室へ放り込まれた。
先日グランコクマへ戻ってきた時は色々と別件の話し合い等もあった為に手をつけられていなかった職務は山のごとく積み重なり、見たこともない程の書類に追われている。やっと戻ってきたと言わんばかりに、ミカルの下へは次へ次へと新しい仕事も振り込んできて、一息すらつくことのできない状況になっていた。

(陛下が逃げ出したくなるのが……少しだけわかる、かも)

自分で作り出した現状とはいえ、皆は悪びれなく仕事を運んでくるから余計に溜め息が出そうになる。
その上、ミカルは平和条約にも関わっていた為に、ジェイドの率いる第三師団の件についても密接。ジェイド不在の今、それについての話もミカルの方へ来てしまう。
ほとほと、休む暇などない。



「よっ」



執務机に向かって延々とペンを動かしていると、不意に後ろから声がした。


「……!?陛下!?」


こんなところにいるはずのない人物の姿に、ミカルは眠気混じりの目を丸くした。
皆と別れてからのここ数日、ろくに眠れていないミカルの目は、下にうっすらと陰りを作り始めていた。

「お前、すっげー顔だな」

ミカルの顔を見て、思わず顔を引きつらせたピオニー。
しかしそんなことよりも、彼は何故か寝室の扉から顔を出している。ミカルはそちらの方が気になって仕方がなかった。











49.儚くも蕾











 


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