小説 | ナノ





始まり/1



 頬を風がそっと通り過ぎていった。鼓膜を震わせるのは鳥の囀り。揺らぐ光が瞼を透過して踊る。その眩しさに、深い底に沈んでいた意識がゆっくりと浮かび上がった。

「・・・・ここは?」

 チチチ、と見上げた大木の若枝から鮮やかな青の小鳥が飛び立っていく。ふらつく体をなんとか支えて立ち上がり、周りを見渡せば、一面の緑が視界を埋め尽くす。

 どうやら私は森の中にいるらしかった。




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