01




息を弾ませながら鬱蒼と生い茂る草をかき分けて駆け続ける。
手足についた重りが思った以上に体力を減らしていて、筋肉も酷使されているのが分かった。だが止まるわけにもいかない。
背の低い枝に捕まり木の上に移動して、来た方向へ戻り始めた。
すると前方から何か来る気配がしたので、
―――いや、その何かが何なのかは知っている――、その衝突を避けるために横道に反れたのだがそれも横にずれてさらに近づいてくるようだ。
あっちも気づいているというわけか。
木から降りて待つとすぐ、暗がりから姿を現した男。
その男はいきなり頭を狙い蹴ってきたのでしゃがんで避けると、顔面に膝が迫ってきてぶわりと汗が額に浮かんだのがわかる。 その膝を掌で受け止めて懐に飛び込んで拳を叩き込んだつもりだが、彼のごつごつした手に受け止められてしまった。
拳を捕まれて腕を捻られて仰向けのように倒されてしまい、背中を地面に打った衝撃で肺の中が空っぽになる。


『げほっ、ぅ、!』


とどめの正拳突きが放たれそうになったところを間一髪で体をスライドさせて避けた。


「おお、やるじゃないか。」

『よく言う…!』


地面に手をつけ、逆立ちのまま踵で蹴りを入れようとしたら腕でガードされる。 くそ、重りのせいで鈍い蹴りになった。
カウンターされそうになったのでバク転を何度かして距離をとるがすぐ詰め寄られてしまい、こちらは構えが遅い。


『ちっ、』


1発K.O.のアッパーを顎に食らった。




「舌打ちなど可愛げないことはやめておきたまえ。」

『うるさい、てかかわいいとかやめて。』


愉快そうに笑うレイリー。 顎に食らったアッパーのせいで気を失っていて、目が覚めたらレイリーがいたというわけだ。
そのレイリーは、私の勝ちだなと言いながら缶を控えめにころんと蹴り倒す。
そもそもなんで見知らぬ島でレイリーと2人でこんなこと、缶蹴りなんてしているのかというと、1ヶ月前にまで遡る。
1ヶ月前、ルフィの2年後に会おうというメッセージである16点鐘後、俺は別にそこまで待つ義理もないからお別れしようと思っていたのだが、レイリーに君もまだまだ強くならねばならないと言われたのだ。


『は?強く?』


いや殺人鬼は強さにそんなこだわらないと言おうとしたが、彼の次の言葉で気が変わった。


「君が進もうとしているこの先の人間に用があるなら、今のままでは無理だ。」


君はスタミナがなさすぎる、この先はもっと巨大で凶悪だぞ。 …確かに自分のスタミナはまだ足りない自覚はあり、未知の敵である兄さんの仇を考えると負けたくないのだ。
じゃあどうやって強くなろうかと思うと、こちらの考えを見透かしてか、彼は私に考えがあると言ってシャボンディから遠くはない孤島に連れてきた。


「君にはまず、先程も言ったがスタミナをつけてもらう。期間はそうだな…、1年以内に私に勝ってみるというのはどうだ?」

『へえ、いいよ。』


面白い、やってやろうと刀を構えてみせると、いいや違うと言われる。 はて?


「それはなしだ。」


指をさされたのは刀。 つまり武器はなしで勝てということらしい。


『なるほど組手かな。』

「そう、しかしただの組手では面白くないからな。缶蹴りを知っているか?」

『………は?』

「缶蹴りで勝負だ。私が鬼で、会ったら組手、私を倒して進めばいい。私に倒されたら君の負けだ。」


さらに細かい説明を言ったあと分かったかな?なんて笑いながら言うレイリーに思わず呆けてしまうが…、まず会うことを回避する確率は低いだろう、彼に見つからないほど気配を消せる自信は今はない。 しかしそれができたら?
はたまた彼を倒せるほど身体能力が上がったら?


『…強くなろうだなんて考えたことなかったよ。』


しかしやる価値はある。 答えはもちろんオッケーだ。
そんなわけで俺はこうしてレイリーと缶蹴りをしている。 今まで組手全敗中、悲しい。 顎がずれてないか噛み合わせを確認していると今日はここまでだなと言われた。
ちなみに俺はルフィのようなサバイバルはしていなく、レイリーさんの家に厄介になっている。
いや最初は俺もサバイバルした方がいいのかと思っていたのだが、お風呂とかない生活はちょっと勘弁したいし料理できないしということとレイリーさんもそのつもりはなかったということで回避された。
甘いのか厳しいのかなんだか。


長ったらしい説明はいらない

(理屈抜きガチンコバトル
)



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