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会場内の誰もがただ呆然と、大口を開けてその様子を言葉を発することなく眺めることしかできずにいる。
まぁ一部は当然のように見ているわけで俺もそのうちの一人なんだけどね、と思っていたら、拳の関節を鳴らしながらとんでもないことをしでかした当の本人からの第一声が口に出される。


「悪いお前ら…、コイツ殴ったら海軍の"大将"が軍艦引っぱって来んだって…」

「おまえがぶっ飛ばしたせいで、斬り損ねた…。」

『同じく。』


これを口火に航海士はタコに撃たれた彼に駆け寄り、今何をすべきか話し出す一味の面々を見るが、なかなか肝が据わっていると思う。
当然殴った手前徹底抗戦というわけで、首輪のカギを探し出し彼女を解放することと怪我の手当て、もちろん俺は解放のお手伝いだから刀をまた構え直した。


「…チャルロス!!」

「チャルロス兄さま〜!!お父上様にも殴られた事などないのに〜!!」

「おのれ!下々の身分でよくも息子に手をかけたな!この世界の創造主の末裔である我々に手を出せばどうなるか――ッ!?」


悲鳴が混じった天竜人の叫びと怒りの声に会場も動き出し、観客全員外へ逃げる動きになり、こちらもケイミー解放に本格的に動き出した。
わんさかと出て来る衛兵を次々と斬りつけながら、天竜人の軍艦と"大将"のお呼び出しの声に耳を傾け、"大将"がどれだけ強いのか、不謹慎ながらもその考えに少し高揚を覚える。しばらくするとまた天井からとびうおが飛び込んできて三人の人影が飛び降りてくるのが見えた、まさかそのうち一つの影が天竜人をクッションにして着地するなんて思わなかったが。悪ィおっさんと軽く謝罪する狙撃手はきっとそのおっさんが何なのか知らないのだろう。


「ルフィ、ケイミーは!?」

「あそこだ!首についた爆弾外したらすぐ逃げるぞ。軍艦と大将が来るんだ。」

「海軍ならもう来てるぞ、麦わら屋。」

「何だお前…何だそのクマ。」


ご丁寧に海軍が今どうなっているのか説明している様子を聞きながら周りにいた敵を一掃するため回転斬りをする、彼の名前はトラファルガー・ローというらしい。
てか座ってないで手伝えよ。
とかやっていたらケイミーがいつの間にかピンチだった、危ないと矢を構えるもその前に天竜人の彼女は気を失って倒れる。
ステージ後ろの幕を破って出てきたのは老人と巨人の奇妙な組み合わせで、酒飲みつつだしお金を盗るためにわざわざ捕まったとあっけらかんに言う老人はなんて呑気なんだろうか。
その様子に動揺を隠せない衛兵たち、確かに錠をどうやって外したのか俺も気になるね。


「レ…レイリー、」

『(誰?)』

「おお!?ハチじゃないか!?そうだな!?久しぶりだ、何しとるこんな所で!その傷はどうした!
―――あ〜いやいや言わんでいいぞ、……ふむ…、………ふむふむ、」


辺りをきょろきょろ見回し始める老人にみんな怪訝な顔をしながら注目すると、だんだん状況をつかめ始めたのか頷きはじめる。


「つまり、成程…まったくひどい目にあったな、ハチ…、お前達が助けてくれたのか。
―――さて、」

『!』


なかなかどうして――、額から汗が一つ流れる、なんて覇気だ。
会場の衛兵たちはみんな気を失って一斉に倒れてしまった、びりびりと覇気の余韻が肌を刺激する。


「会いたかったぞ、モンキー・D・ルフィ。」


それは唐突に、淡白に、

(予想だにしなかった人)



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