05




そして、ようやく本番と言えるような戦いが始まった。一斉に海中から出てきたトビウオたち。
俺も便乗してトビウオに乗り込んでみるとトビウオは宙に飛び立った、少し浮くような感覚が気持ち悪いと感じた、まるでジェットコースターみたいな。
ライダーズのもとへ合流して弓矢で敵を射るが、素早いからなかなか当たらないため苛つく、でも射るしかない。
そうしている内に敵から左右挟まれ銛で突かれそうになると、ジャンプして咄嗟に避けて相討ちさせる。
しかし飛んだのはいいが、一瞬、そして、浮遊感。


『やば…!』


高さ的には船に着地できそうな位置だが高すぎる、多分足にヒビがはいってしまうんじゃないだろうか。しかし船を壊すわけにもいかないどうすればいいのさ…!
落ちる感覚に身を任せながらなぜか冷静な頭で対処法を考えていたら、


『は、』

「危ねええええええええ!!」

――ガッ!!

『うぐっ、』


なんと船長(味方)からの攻撃。
まさか味方から攻撃されると思っていなかった俺は、トビウオに突っ込まれては、そのままトビウオの頭に乗るしかない。
衝撃を受けた腹を抑えながら船長を睨んだ、痛い。


「ワリィワリィ!」

『内臓飛び出るかと、』

《一旦潜る!!》

《了解》

『え、ちょっと、潜るって―――!』


そう伝わったその瞬間急速度で落下し、俺の体は泡と冷たい水に包まれた。目を開けて口に片手を当てながら水流に流される、抵抗虚しく。海って海流があるから意外と泳ぐの大変っていうけど。
白目をむいて流される船長の腕を掴んでみたがここで一つの問題が生じた。


『(俺泳げないんだけど…!)』


そう、息を止めてはいられるが泳げないのだ、着衣水泳なんてなおさら。
さぁここからどうしようかと水面を見上げていると、


『!?』ゴボッ、


助けるために飛び込んできた二人を見て驚く、いやどちらも能力者だなんて驚くしかないだろう。
驚いて思わず吐いてしまった息を悔やむ、さすがにこれは苦しい。
というか三人を抱えるのもかなり至難の技で力がいる、小さなこの体に段々力が入らなくなってきた。


『(重い…!)』


こんな状態だと浮力はてんで助けにならない、能力者は異様に重くて押し潰されそうだ。こんな重いもんなの?
息に限界が来てしまい気管に海水が流れ込んでくる、また新たに飛び込んできた二人の影を最後に意識が黒く塗りつぶされた。
それでも三人の手を掴んでいた俺は偉いと思う。


何やら音楽家の凛々しい、とうっ!という声が耳に入る。徐々に視界に入る光に目を細めた…ああ、溺れたのかと濡れた体でそれを自覚しつつ体を起こす、口の中の塩辛さに顔をしかめた。
泳げないことがこれほど不便だとは思ってなかったね。


「あら、お目覚めね。大丈夫?」

『とりあえずは…、って、あ。』


目の前で船長がまた懲りずにトビウオに飛び乗る姿が見えた。
もう巻き添えは食らいたくないものだと思いつつ、いつまでも寝ているわけにはいかないわけで、低空飛行で攻めてきたトビウオに剣を再び構えて迎撃する。殺さない感覚というものがひどく慣れないものであったと強く感じた。
手加減しなきゃならないって面倒だ。


《一騎で行くな、編隊を組め!》

「え?」

「ぐああっ!」


隣でへんたいという言葉に敏感に反応する船大工。
自覚ありの変態ってどうなのそれ。へんたい違いでは。
そう思いながら銃撃を避けまくる、零崎に銃は効かないって常識浸透させてほしい、だってつまらないじゃん。こんな無駄なあがき。


《編隊を崩すな!》

「え?」

「うわっ、何だあいつ!?銃が効かねぇ!」

「ストロングハンマー!!」

「どわぁあああっ!!」

『っ、笑わせないで、』

「ぎゃあああ!」


耐えきれなくて笑いながら相手に思いっきり蹴りをいれてしまった。さぞ気味悪かっただろうに申し訳ない。
だけど、恨むなら船大工だ、俺を笑わせる船大工が悪いんだよと当て付けがましい考えに至る。
上空のトビウオへ矢を飛ばしてやると銛で弾かれた。やるなと思わず舌なめずりして、肩借りる、と言い返事も聞かずに船大工の肩を踏み台にして跳躍し、驚く敵に刀を振り下ろしてやれば一気にそいつらは船に叩きつけられた。
もちろん刀の面で押してやったので殺したとは思わない、多分ノープロブレム、無問題。
そして仰向け状態のトビウオの腹をトランポリン代わりにして、一気に上に跳び応戦してみた、反対側では落雷が見える。まったくあの武器は不思議な武器だ、確か"天候棒"だったはず。さながら航海士は魔法使いみたいだと思いながら空中で回転斬りをして見張り台の上に着地した。


「お見事。」

『あんたもその能力すごいね。』


考古学者と顔を見合せ笑った。


笑っちゃうな。

(なかなかどうして面白い)




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