02




一回殴ってやろうかと思っていたら頭上から声。
空を見上げれば人影と何か小さいやつ、…星形?が落ちてくる。え、こっち来る…!


『え、え、』

「んあぁぁああぁあ!んあれはぁあああ!!」

『うわ、顔面どっかぶつけたの?』


ひどいよそれ、という俺の言葉にも反応せず、あまりにもひどい破顔っぷりの約一名にドン引きしながら一歩後退りすれば物理的に無事じゃ済まない力で落ちてきたそいつらの下敷きにコックが。
普通骨折れるって。
しかしそれで無事とか甲板もコックもなんて丈夫なんだろうか。落ちてきたものを見てみると星形の変なのと、人げ、ん、あれ…尾びれ、鱗?


「わーっ!人間の人潰しちゃった、ごめんなさい!だっ、大丈夫?」

『………すっごい、』


―――人魚だ。
その呟きは彼らの興奮染みた声に打ち消された。
おとぎ話だけとか、そんな存在と思っていたそれが目の前に現れて改めてこの世界を知る。やっぱり常識ってあてにならない。


「わたしはケイミー!消化されそうな所助けてくれてありがとう!私海獣に食べられやすくって、かれこれもう20回くらいは食べられているかなぁ。」

「いや食べられすぎだろ。どんだけ油断してんだ。」

「そうだ、何かお礼しなくちゃ、たこ焼き!たこ焼き食べる?」

「たこ焼き!?本当か、俺大好物!」

「本当!?じゃあお一人500ベリーになりまーす。」

「って商売かい!」


華麗なツッコミが繰り広げされている中俺は星形を眺めた。なんかあいついじいじしだしたぞ、分かりやすいほどどんよりしてる。
感触はどんな感じなのか、頭の中の大半はその考えでいっぱいだった。だって、気になる、星形だよ星形。動く星ってなに。
やっぱりヒトデとかかな、でもあんな表面してるってことはぬるぬるしてたりしないのかな。あー触ってみたい、人魚もいいけどあれも気になる、それもかなり!

余談だが元来嘉識という人間は不思議なものに興味を持ちやすい、かわいいものではなく不思議なもの。
その不思議なものという判断は彼のさじ加減ではあるが。そのため何かに興味を持ったら誰かに聞いたり文献を読んだりして知ろうとしてきた、だから今回のヒトデ魚人に対してもあれが一体何なのか聞こうと内心そわそわしている。ちなみに本人の内心はいくらそわそわしているとはいえ、周りから見れば彼は真顔なので何を考えているのか分からないため、彼はただぼーっとしているように見えるらしい。


「人魚〜!そうっ全人類の憧れ人魚!!海の宝石っ、人魚!!そんな人魚におれは出会ったァ〜っ!!」

『騒がしいなあんた。』

「かーわうぃーなァ〜、人魚なんておれ初めて会ったよ!!ケイミーちゃんて言うの?」

「おめーココロばーさんに会ったじゃねェかよ。」

「――!!

―――スリラーバーク?いや恐かねぇよ!今までで一体何が恐かったって?」

「すまねぇサンジ!アレはなかったことにしよう!」

「あんたら失礼よ。」


話を聞く限り本当に俺も失礼だと思う、そのココロばーさんとやらに。暫く様子を眺めていたら船長が下世話な話を持ち出してきた。おトイレのお話。
人魚にそれってどうなの、セクハラ言われたら完璧にアウトな質問だと思うんだけど、っていうか人魚もその話に乗っちゃうって…俺が気にしすぎなだけ?現代人だった故に気にしすぎなだけなのか…と少々頭を捻りつつ話を聞く。


「ケイミーケイミー?おかしいおかしい…、誰かが足りなくない?その楽しい輪の中に足りないものってな〜んだ?答え、おれ…。」

『自問自答かよ。』

「あ、」

「そうだ気になってたんだ!おいケイミー、何だ!?この喋る手ぶくろ!」

「ごめーんすっかり忘れてた!」

『ちょっ、俺も触りたい…!』

「うおっ、何だお前!」


何か喚くヒトデはスルーしておいて指先でゆっくりと突っついてみる。


『!!…すごいふにふにしてる!』

「何だお前、こういうの好きなのか?」

『不思議なものとかならわりと!』

「っそ、そうかよ…!」


我ながらキラキラしながらそう答えれば顔を背けながら答えるコック。え、待って、人の笑顔見てそれは酷いんだけど、軽く傷つくかも。
少し(´・ω・`)な顔になりながらぎゅっと抱き抱えた。不思議な感触です、はい、嫌いじゃありません。そこまでぬめりはないかも。
そして暫くヒトデを堪能してたらコックは元に戻った、目がハートだ。すると考古学者に手招きされたのでヒトデを離してそちらへ向かう。


「あなた…やっぱりさっきのスカート履いてみない?きっと似合うわ。」

『似合うかどうか基準かなの?絶対無理だって、履かないから。』

「つれないのね。」

『いやいやいや俺男。つれないつれるの問題じゃない!』


首をぶんぶん振りながら否定する、笑顔で大分えげつないこと言うよな。あ、それわたしも見たいです、なんて言ってくる音楽家に蹴りをいれながらこう思った。考古学者、恐ろしい子。



あの子の素顔

(少し見ることができました)




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