01
俺が臥せて約一週間、大分風邪治った、さらに怪我も。
そして残念ながらダフトは治してくれませんでした、はい。
IQとやらが置いてありそうな場所は案内してもらえなかったし(今思えばこれ全部金獅子の策だったのかもしれない)どうしようもない。
まあ幸いなことに俺は他の家賊よりは"呼吸"の必要性が少ないということだろう。
一ヶ月ちょいは持つ、ような気がする。
いや、さすがに零崎一の"菜食主義"者である曲識ほど欲がないわけでもないんだが、……つまるところ二番目程度としておこう。
話が飛んだ。
さて、一週間。
この間に金獅子たちは海軍に喧嘩売りに行ったり東の海に侵略のため繰り出したりしていたらしい。
そしてちょうど今、金獅子たちに連れられてきたのは、
『屋内プールとかあったのかよ……。』
「ピロピロピロピロ!泳ぎたいのか?」
『いやそういうわけじゃなくてだな、………いいや、何でもない…。』
「気になるじゃねェか小僧。まあ、俺もどうでもいいんだがな!」
「どっちだよ!!」
「ジハハハ、さて、お前はちょっとそこで見ていろ。」
『?』
そう言って温室プールへ踊りながら入っていった。なんだやっぱりバカか。
音楽が終わってから俺も温室に入り込む。
もわっとしたぬるい空気が体を包み込んだ。
「――で、こっちが我らが有能なる戦闘員、嘉識だ。」
『よ、よろしく……?』
「仲良くするつもりなんてないわ。」
『……あっ、そう。』
コンマ一秒でオレンジの髪のお姉さんに嫌われた。
「あんた、いつまでここにいるわけ?」
『これ読み終わるまで。』
何なんだこのお姉さん超怖い!
ナミ、だっけな、超優秀な航海士さんらしい。
紹介された時すごく嫌そうな顔をしていたから大方また拉致ってきたのだろう。紹介された時に金獅子たちに隠すことなくじとりと視線を投げたのは言うまでもない。
そんでお姉さんも不機嫌なのは分かるんだがこっちに苛立ちぶつけないでほしい、ざくざくしてて気になるから。
どうしてこうなったかと言うと、まぁ俺はもうこの館内では基本自由なわけで、快適に本を読むべく温かかったこの部屋を選んだだけだ。
いや湿気はちょっとあるが許せる範囲、…ただ本は湿るかもしれないから日干ししなきゃなと思う。
半分読み終わって一息、ふと思い立ってちらりと電伝虫を見ればもしゃりもしゃりと草食べてた、あんまりいい光景ではない…というかすごく大きなカタツムリでげんなりする。
目を癒そうとドクターの実験の成果の一つとなった電気鳥の方も見る。可愛さが段違いだ、と一人納得。
『あ、お姉さんさー、』
「何よ、」
『逃げないの?』
「なっ…、何言ってんの!あんたあいつらの仲間なんでしょ!?」
『別に…、境遇的にはお姉さんといっしょだけど。』
「え、」
『まぁ帰る場所ももうねぇからここにいるだけで…………、あー、いや俺はどうでもいいな。お姉さんだよお姉さん、帰る場所あるでしょ。帰らないの?』
「確かに、電伝虫は今食事中だからチャンスかもしれないけど、信用ならないのよ!」
『俺が?』
「あんた以外に誰がいるの!?」
なんかカッカッしてんなお姉さん、カルシウム取ろうぜ。
『仲間じゃないのに言うってか。俺監視員じゃないからそんなこと金獅子に言う義理もないし、それに、メリットにならない余計なことはしない性分なもんだから、ってかそもそも逃げたところで俺が言おうが言わまいがバレるんだし。どうせバレるんならわざわざこんな関係の俺が言うとでも?
これでも、信用ならないってか。まあ初対面だし無理もないけど。』
「………あんた、変な奴ね。」
『…よく言われる。』
「―――ありがと、確かにこんなことでチャンス逃してらんないわ。うだうだしてられないし…、疑ってたあたしが馬鹿らしかった。」
『何その上から目線。』
「縁があったらまた会いましょ。」
『え、鳥も連れてくの、ってか泳げるんかい。』
そう言ってお姉さんと鳥はプールに潜っていった。
波紋を暫し眺めていたがやがて体を伸ばし、
『ふぁ…、寝よう。』
そうして心地よい温度に任せて眠りについたのだった。
見てないふりしてるだけ
(つまるところ、)(気配が睡眠の邪魔だっただけ。)
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