02




踏み出した一歩目はほぼ同時だった。
詳細な作戦は聞かずして、ハンコックとその場を一気に駆け抜けていく。待ったなしだ。


「一度ならず二度までも…!よくも妾の愛しき人を!!許さぬ!!許さぬぞおおお!!」

『全くもって同感、俺は左腕から行く。』


ハンコックが地を蹴り跳躍。そして右腕を勢いよく駆け上って行く。俺は向こう側の左腕に飛び移って行くためでかい背後を駆け抜けながらその様子を眺めた。
彼女は右肩に到達した時点で宙へ跳躍し、そしてそのまま宙を蹴ってでかぶつめがけて脚を向ける。


「パフュームフェムル!!!マグナッ!!!」


ずどん、とでかぶつが体をくの字に曲げるほどの衝撃。強制石化させて彼女ほどの覇気を纏った蹴りでもその体を砕くことは叶わなかったらしい。
だがしかし、石化が解除される前の今なら。
ようやく到達した左肩から同様に上空へ跳躍した。


『ハンコック!!もっと石化!!』

「妾に命令をするな!!」


そう言いながらもスレイブアローで石化の範囲を広げてくれたあたり、なんだかんだ優しい。
刀を自分の目線と水平に構え、切先をハンコックがヒビ入れたそこに照準を合わせた。彗星の如く一直線に宙を駆け抜けて勢いよく突っ込むものの、切先が少しめり込んで周りにヒビを入れた程度にとどまる。


『〜ッ!』

「無駄だと言っているだろうが!」

『まだ、だ!』


刀をそのままにしてまた宙へ跳躍し、脚に覇気を纏わせて刀めがけ飛び蹴りを放った。柄の部分とミートした瞬間にばりばりと雷のような衝撃波が広がる。
あいつの覇気と俺の覇気がぶつかったせいか、それとも殺意しか受け付けない刀とぶつかっているからかは分からないが、今は兎にも角にもこの分厚い体をぶち抜いてやらないと気が済まない。
地鳴りのようなうめき声が頭上から響く中、自然と力がこもって自分の口からも声が漏れた。全身の筋肉が膨張するような感覚と骨折しているであろうあたりから伝わる熱がどんどん身体中に巡っていくにつれ、身体中の血と意識もどんどん沸騰していくような錯覚を覚える。


『こんの…!!ぶっ、壊す!!!』


それでも絶対的な自信があった。壊せないものはないという自負。自尊。矜持。誇り。それが当然と思える自意識。それらだけが今自分を保つすべてで、ぶつけられるすべて。
そして、ようやっと覇気の均衡が崩れればあとはなんてことなく、刀がずぶりとめり込んでそのまま中を猛スピードでがりがりと突き進み、ついに身を焦すような破壊衝動とともにその頑丈な体を貫いてやっと意識が覚醒する。がむしゃらになりすぎたか、一瞬意識トんでたと思う。
頭だけ振り向くとぽっかりと穴が空いて向こう側が見えたのに満足し、ほんと久々にガッツポーズというものが自然に出た。


今度こそ、と
(言葉に力を込めて)





221/224

 back



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -