06





俺の目の前でうねる炎は夕焼けと重なっていて、空一面が燃えているようだった、なんて現実味がない。
でも目の前で起きてる現実で、俺の口からは乾いた笑いしか出てこなかった。


『は、』


なあ、何で、いないんだ、何で俺の目の前から消えるんだ、約束破るなよ、独りにしないでくれよ、おいてかないで、嫌だ、認めたくない、見たくない――、

思いとは裏腹にただただ見開かれる眼、握り締めた拳から流れる血、脳内にどこからか響いてくる嘲笑の声、吐き気がするほどぐるぐる渦巻く感情。
ただ立ち尽くして見つめることしかできない、何で、屋敷の外に逃げてきたようなあいつがいて、兄さんがいないんだよ、答えてくれよ。

ふと、空を染め上げる炎の中で一際また大きな爆発があって、カラン、という自分の足元からした音を耳が拾う。
ゆっくりと呆然と目を向ければ、そこにあったのは、俺のわずかな逃避の意識すら奪い去るには十分だった。



俺の首元にある、同じデザインのロケット―――、




見た瞬間、思考回路がぶつりと切れて、真っ白になって、崩れ落ちて、



――嗚呼、もういないのか、





『あ、…っ、
っあ゛ぁああアアアアああああアアアア、アアァァあああああああああ゛あ゛アアアアアアアアああああああああぁぁっあアアアアアっ、アああああああアアアアああああアアあああぁぁっうあ゛あ゛あ゛ああアアアアああああああああァァァああああアアああ、あ゛っああアアあああ゛あああアアアアあああアアアア゛ああああアアアアアアアあァァアアアアあああああああ゛ああぁぁぁぁぁああああああアアアあアあああああああァァっ!!!!』



燃え盛る炎の前で、獣が如く慟哭や悲痛の声が入り交じった咆哮を放つことしかできなかった。



反芻する慟哭

(何が護るだ、)(何一つ掴めやしない、救えやしない、無力な人間じゃねぇか)





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