02
残念ながらドフラミンゴに致命傷とはいかず、しかしトレーボルはラジオナイフの効力により斬られて体がバラバラのまま元に戻ることができない。
それはチャンス以外の何物でもなく、ローはすぐに剣を構え、そして狙いを定めて突きを繰り出した。
その突きを間一髪のところでドフラミンゴがそらし、トレーボルはローの足をべとべとで固定する。
そしてドフラミンゴの糸が動けないローに突き刺さった。
それに気を取られたルフィは覇気を纏ったドフラミンゴの蹴りをまともにくらい、吹っ飛ばされたその先には剣を上段に振りかぶったベラミーがいる。
糸によって背中側に縛られた両手では、避けることどころかろくに受け身を取ることすらできない。
したがって、ベラミーの避けろという声に為す術なく、と誰もが思っていたが。
『やめろ!!』
剣は刀で受け止められ、ルフィはそのまま地面にスライディング着地をした。
満身創痍の身では力が入らず体が震え、刀と接地している部分がガチガチと音を鳴らしている。傷口から血がぶしゅ、と音を立てて噴き出す。
「オイオイまだ動けたってのか?」
『…フーッ、…フーッ…!』
「…フッフッフッ、息は荒く足を引きずりながら、刀を持つ手は震え、全身血まみれだってのによく動いたもんだ!」
だがもう限界だと笑みを濃くし、弾糸を数発嘉識に向けて撃ち、身をひねり避けたが一発こめかみをかすってバランスを崩し、地面に倒れ込んだ。
「俺が一番嫌いなことを覚えているか、ロー!?見下されることだ…!てめェらみてェなガキ共に!一瞬でも勝てると思い上がられたことが耐えられねェほどの屈辱!いいか、おれァ世界一気高い血族…!天竜人だぞ!!」
「えェ!?」
それは通りで偉い血筋だ。
ドフラミンゴ本人曰く、世界一の権力を放棄した父を殺し、首をマリージョアに持ち帰ったが時すでに遅し。
裏切り者の一族という扱いを受け、彼らを憎んだ。だから俺らとこんなことしている暇はないらしい。
刀を杖代わりにしてふらり、ゆらりと立ち上がり、ドフラミンゴに刀を向けながら口にした。
『…すべてを破壊し尽くしたいほどの憎しみならば、俺がよく知っている。だから、あんたのその憎しみも、恨みも嫉妬も怒りも全てがわかる、理解できる。だけど、残念ながら、俺は暴力の世界殺し名序列第三位零崎。流血でつながれた一族。最悪の一族。殺すことは息を吸うことと同義とする殺人鬼。俺は身内に甘いんだ、身内に仇なす者はすべてこの破壊世界零崎嘉識の敵だ。だから、…だからさ、あんたがこの世界を壊す前に、俺があんたを壊してあげるよ。』
嗚呼、なんて傑作だろうと思い、自然と笑顔が浮かんだ気がした。
息切れしながら思った。
(主人公は俺じゃない)
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