02




ゆらり。
海軍に追われるゾロや錦えもん、それを見ている住民らの騒がしい喧騒とは真逆のゆっくりとした動き。
裂けた額から血が流れ続け、それでもなお立ち上がり刀を持つ少年の恐ろしく不気味な静けさ。
藤虎によって叩き落とされていた少年を捕らえようと集まっていた海軍はその様子にたじろぐ。
息は荒々しく、眼光は鋭くも不気味な静けさがその空間を支配する。
視線はゾロたちが追いかけ回されてる方へ動いた。一歩踏み出せば海軍らの警戒が一気に高まり各々の銃を構える。


「貴様!大人しくしろ!」

『…追わなきゃ、ならないけど…、あんたらも俺の身内に、手を出したなら覚悟してよ。』


零崎を開戦する。
その言葉は撃てェという号令と銃声にかき消された。


『――零崎に銃は効かない。』


銃撃は当たらず。
怪我の酷さからは想定できない速さで距離を詰められ、横に一閃、海兵らの腹がかっ捌かれる。呆気なく音を立てて倒れた彼らを踏み越えてゾロたちを追う海軍らに歩きながら迫る。
ゆっくりとした動きは不気味さを際立て、その様子を見ていた住民らはじりじりと次第に後ずさりし始める。
そしてそれに気づいた海軍らが背後を振り向けば、血まみれの少年が身の丈に合わないこれも同様に血に濡れた刀を持っている姿が目に入った。
少年の背後では負傷し倒れた同志の姿。
海軍中将バスティーユはそれを見て、その少年が、二年前より多くの同志を海軍本部で、あの戦場で斬り伏せたことを思い出した。
中将の名は伊達ではないし、ここで自分の部下を差し出すようなバカでもない。となれば、自分が出るしかないのか。
つ、と仮面に覆われた額に汗が伝うのが分かる。
しかし目の前の少年はすぐそこまで来ているのだ。
そう覚悟を決め部下たちの前に立ち、意を決してというその時にがくりと崩れ落ち、その膝が地面についた。
自分でない、目の前の殺人鬼の方の話だ。
たしかに冷静に考えればその出血量では歩くことすらままならないだろうことはすぐに分かった。
では今度こそ捕らえるのみ。


「どけェッ!!」

「!」


背後の部下たちの合間をぬって現れた海賊狩りのロロノア・ゾロ。
不覚をとられ、目の前の少年を掠め取られてしまった。


「おい!しっかりしろ嘉識!!」

『――嗚呼、ゾロか。』


ぎらぎらした視線はすぐにふっと消え失せ、穏やかな表情に移り変わる。
ゾロにとって、その切り替わりは異常に早く、時々、それが恐ろしくも感じるのだ。


君のデュアリズム

(その二面性がアイデンティティなのか)




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