03




前言撤回だこんなの。
しばらく寝ていたらいつの間にか船の中に変なおばさんが入ってきてあろうことか船を常人では理解しがたい形に変えながら医務室まで来やがった。俺は大人しく寝ることもできないのか。
掴もうとした刀はすでにぐにゃぐにゃにされてしまい、背後に壁、前におばさんと廊下につながる扉という状況。きっともれなく俺もあの能力を食らえば自称アーティスティックになるのだろうが、そんなのは絶対嫌だ。
とにかくこの不利な狭い空間を脱出するべきである。


「さーっ!観念するザマス!」

『誰が!』


こちらに手をかざした瞬間、ベッドのシーツを空間めいいっぱいに広がるように、彼女の視界を奪うように投げつけた。
シーツの下からスライディングキックで彼女の足を蹴り、倒れたその体の上にシーツが乗せられた隙に部屋から脱する。
追ってくるおばさんとの差を広げながら廊下を走り抜け、外へとつながる扉を蹴破った。
病み上がりにこんなことするもんじゃない。息がぜえぜえする。


「嘉識!?何なのこの騒ぎ!」

『敵襲だ敵襲。中はもう意味わかんないアートにやられてる!これ以上船にやられたらもう機能しないよこれ。』


敵襲と聞いてぎゃーぎゃー騒ぎ立てる彼らを見て思った。あれ、まともに戦意があるのって俺ぐらいなんじゃないか。
そうこうしてる内に出てきたおばさん。
アートが爆発するとかなんとか言ってあちこち変形させるのはやめてほしいんだけど。


「オホホホホ〜!こみ上げるイメージ!吹き出すあたくしの心!」

「よくもサニーを!」


ナミ、チョッパー、ブルックが一斉に真正面から襲いかかるがいかんせん無理だ、あっという間に変なイラストちっくな姿に変えられてしまった。
ついでにもものすけも。
なんてセンスのない姿だ。どんな世界でもどんな時代でもアートとは結局自己満足の塊でしかないのか。


『ナミ、よく聞いて。下のドッグはまだ無事そうだからミニメリーとかで脱出して。俺がなんとかしてみせるから。』

「でもあんた、刀もうやられちゃったんでしょ!?」

『俺がこの2年何やってたと思ってるの。いいから。』


だって勝つ自信しかないから。
そう笑って返せば、一瞬躊躇ったようだが無理しないのよと言って船内に退避していった。表情が変わらなくてなんだか分からない。
逃すまいとこちらに向かって放出しようとした能力を上に跳んで避け顔面に向かって蹴りを放つ。
すんでのところで体を床に伏せて避けられたので、そのまま距離を詰めて待てと言うおばさんの腹に武装色の拳を叩きつけた。いや待たないから。
俺はサンジではないので女性には優しくとかそういうことは特に気にしない。
苦しがっているおばさんにそのまままたがってぴたっと眼球すれすれに目潰しの指を突きつけた。


『戻せ。戻さないなら眼球抉り出す。』

「ひっ、ひぃ!っしかし、そんな脅し、乗らないざま、」

『あっ、そ。』


じゃあもう寝てろと目潰しの構えの手を拳にして大きく振りかぶり、そのまま真っ青になったおばさんの頭を横っ面から殴りつけた。意図的に脳震盪を起こさせる。
トラファルガー曰くドフラミンゴは自分の仲間を大事にするとのことだから、まあ人質としてしばらく大人しくしてもらおうじゃないかと。
意識を失い、船やナミ達が一斉に元の姿に戻ったのを見てこれで戻らなかったらやばかったと思った。
そして何か縛るものでもないかと探していたら電伝虫がけたたましく鳴り響く。何度か鳴っていたようであるがまあそんな場合じゃなかったんだと思いながら受話器を取った。


『はいもしもし。』

「殺人屋か、よく聞け。いいか、今すぐグリーンビッドに船を回せ!お前らにシーザーを預ける!!」

『えっ、ちょ、』


あっという間に切られた。
何がどうしてそんなことになってんだと聞く暇もなく電話が切られた。
爆音とかノイズがひどかったあたり、もうどんぱち始めてんのかと想像できるのだが、そこに船を回せとなると巻き込まれ覚悟になりそうである。取り引きダメだった?
さてこの厄介そうな事態どうナミに説明しようかなとおばさんをぐるぐるに縛りながら考え始めるのだった。


絶望視された計画

(嫌な予感)(こういうときの勘は当たる)




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