01.烏森を守る者

14年前。私たちは烏森の地に生まれ落ちた。気づけばいつもふたり一緒だった。どこに遊びに行くにも、何をするにも、いつもそばにいた。そして、それはきっとこれからも変わらないのだろう。

「珠守!そっち行ったぞ!」
「…方囲、定礎、結!」

青く透明な結界が妖を囲った。珠守は小さく息をついて指を結界に向ける。

「…滅。」

その声とともに、ぽしゅっと小さく爆発するように妖は結界ごと消滅した。天穴を構えると、散り散りになったそれが勢いよく吸い込まれていった。

「やっぱ珠守は頼りになるな!さんきゅ!」
「どういたしまして。」

くしゃくしゃと良守に頭を撫でられ、珠守は笑みをこぼした。

「あ!良守!またアンタ珠守に仕事押し付けたね!?」
「げっ、時音!これはちがっ、いや、ちげーって!」

別の場所で妖を仕留めてきた時音が駆け寄ってきた。珠守の身を案じてか、良守に対する口調はきつい。

「時音ちゃん、私は大丈夫だよ?」
「でも…。」
「平気だから。ね?良兄もいるし。」

方印の浮かんだ右手で、良守の左手を握った。温かい彼の手からは、とくんとくんと穏やかな鼓動が感じられる。良守も珠守の手を握り返す。

双子ゆえか、珠守は良守といれば不思議と落ち着くのだ。まるで、エネルギーか何かが流れ込んでくるかのように温かく、安心する。

「珠守は良守と違って体力ないんだから…、あんまり無理しないでよ?」
「だいじょーぶだって、なんかあったら良兄が守ってくれるし!ね?」

時音は心配そうに珠守を見るが、当の双子はあまり気にしていない。それもそのはず、この会話をしている間に珠守の体力はかなり回復していた。それを良守も分かっているのだ。

「おう!ぜってーケガさせたりしねぇから!時音も珠守も安心しろ!」

にかっ、と良守が笑って見せると、時音はやれやれと視線をそらした。まったく、この双子は似てないようで似てるんだから。しかも根拠のない自信ばっかりあるところが。

盛大にため息をこぼしていると、背後からハニー、と白尾が時音を呼んだ。同時に斑尾も、あんたたち、構えな、と双子に声をかける。

上だ、と珠守がいち早く呟いた。すぐさま反応した良守が珠守の手を引いて駆け出す。2本指を立てて狙いを定める。

「結!」

良守が結界をつくるが、妖もすぐに避けた。結果的に妖とふたりには一定の距離がうまれ、相手を観察する余裕ができた。

「なんだ、あれ…。」

「カエルに見えるけど…、わぁ、壁吸収してる…。」

どうやらカエルの姿をした妖は、周りの壁や地面を吸収して排出しているらしい。

「ブロック塀はさすがに危ないね…。」

飛んできた破片を、珠守が瞬時に形成した結界が弾く。

「珠守!良守!作戦会議するよ!」


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