13.侵入者

「ときねーー!」
「ときねちゃーーん!」

夜。いつものように烏森にやってきた双子は、屋上に腰掛ける時音に全力で手を振った。昼間に作ったケーキを食べるためだ。そんなふたりに、斑尾は呆れた顔をしながらも、白尾に負けまいと妖を探しに行った。

「ケーキ!作ったの!食べよう!!」

珠守はケーキが崩れないように大事に抱えながら上へ上がる結界を作った。ただし、珠守自身がジャンプして屋上に登れるほどの身体能力を持ち合わせていないため、良守が俗に言うお姫様抱っこで駆け上がっていく。

「あんたたち…、何しに来てるのよ…。」

時音はため息をついた。しかしふたりが座る場所をきちんと空けてやっている。

「たまには、ね?」

ふたりは時音が空けてくれたスペースに着地した。そして意気揚々と珠守が微笑んで良守のリュックからビニールシートを取り出そうとしたときだった。

「!、侵入者…!?」

3人が同じ方向に振り向いた。珠守はぞわりと立った鳥肌をなでつけるように自分の体を抱いた。

「…また後で、食べれたら食べようか。」

時音が苦笑いして珠守の背中をとん、と叩いた。珠守と良守は顔を見合わせて笑い、気配が立ったほうへと駆け出した。




珠守が作った足場を利用して地面に降り立った3人は、学園の敷地の端付近で歩みを止めた。

「確かこの辺だったと思うんだけど…。」

「わ、きゃあ!」

ドサッ、と音を立てて目の前の木から落ちてきたのは、若い女。どうやら霊ではないらしい。

「夜未さん…?ここでなにを…。」

時音が声をかけたことで、珠守は理解した。裏会から派遣された人とは、この人か。

「ち!ちがうの!極秘任務の対象がここでこそこそかぎまわってたなんてことはないの!!!」
「…全部言っちゃってるし……。」

ため息まじりにつぶやいた珠守を見て夜未は目を輝かせた。隣の良守と交互に見つめて、ひらめいたように言う。

「もしかして墨村の方?いま墨村家の方はおふたりで烏森にいると聞いていたけれど、もしかして双子!?なんてかわいらしいの!目元なんかそっくりじゃない!」

ありがとうございます、とよく分からないままに礼を言った良守に倣って珠守も頭を下げた。なんだかやけにテンションが高くてやりづらいなぁという気持ちは、時音に目配せすることで飲み込んだ。

「そうだ!もしよかったらお茶にしない?私お茶がすっごく好きで!」

ぱんっと手を叩きながら言った夜未に、反対する者はいなかった。


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