だぁれ?


「もう…、総悟くん、起きて。早く起きないと土方さんに怒られちゃいますよ?」
「ん…うるせェや…。」

総悟は、枕元で口うるさく体を揺すぶってくる彼女を抱きすくめる。いつものように、布団に押し込めてしまえば黙るだろうと思ってのことだった。

「わぁっ…!もう、総悟くんってば…。相変わらずだなぁ。」

ぎゅむ、と自身の胸板に押し付けられている女性は、さして怒ることもなくされるがままになっている。彼女の頭部を押さえていると、だんだん意識が覚醒してきた。

いつも通りの行動を行ったはずなのに、その反応はまるで違う。そう、ひとことで言ってしまえば、みおではないのだ。みおは誰もが知る、真選組で生活している幼女である。妙に聞き分けや物分かりがよく、子どもらしからぬ口ぶりをする時もあれば、遊びすぎてハメをはずし、怪我をするような子どもらしさも持ちあわせている。選ぶ着物はどことなく大人びているような色合いで、しかし髪型は先日の事件のせいで刀で切り落とされて短髪のまま。見た目にも大人っぽさと子どもっぽさを兼ね備えていた。そんな、みお。

しかし、今はどうだ。

腕の中にある感覚は、幼女のそれではない。綺麗に結われた長髪にはきらびやかでありながら落ち着いた装飾の簪が。背中に手を這わせれば、女性特有の柔らかな曲線美が。そしてなりより先程から聞いていれば口調が江戸っ子の、もっと言えば総悟の、それではない。とすれば、確実にみおではない。

「…誰だお前。」

布団から飛び出て、その女性を見つめた。歳は20歳くらいか…?刺客の可能性もあるかもしれない。じり、と後ずさって菊一文字を手にした。

「んー?いつも会ってるのに忘れたの?みおだよ、みお。沖田みお。」

みお、だと?しかもなぜ沖田姓を名乗っている?

「見え透いた嘘は大概にしなせェ。俺の知ってるみおはまだガキのはずでさァ。」
「えぇ?寝ぼけてるの?まいったなぁ…。」

困ったようにみおは腕を組んだ。顎に手を当てて唸っている。

「んー、とりあえず、朝礼行って来たら?話はその後にしよう?」




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