もぐもぐっ、もぐもぐっ!
もぎゅもぎゅもぎゅ。ごくんっ。
「んぅぅ…!おいしーでさァ!」
「ゆっくり噛んで食べねーと喉に詰めやすぜ。」
「へーきでさァ!」
もぎゅもぎゅ。
「んぐっ!?」
ドンドンとみおは胸を叩いた。ほら見ろ、急いで食べるからだ、と総悟は水をみおの口元に持って行った。みおは手で胸を押さえたまま、コップに口をつける。
「自分で持ちやがれィ。こぼすぞ。」
しかしなおも手を胸にあてるみお。総悟はため息をついて、みおの背に手を回した。大きな手で、腕も駆使しつつみおの後頭部から背にかけてを支えてやる。
軽くコップを傾けると、水がゆっくりみおの口に流れ込んでいった。こくり、こくりと小さな喉が上下する。
「ぷはぁ!し、しぬかとおもったでさァ…。」
「俺はちゃんと注意しやしたぜ。」
「あぃ…。」
みおはしゅん、とうなだれた。しかし目の前のソレを見ると、再び元気を取り戻して食事を始める。
「おいしっ、おいしー!」
もぐもぐ。高速で咀嚼し、一気に飲み下す。その姿を総悟は横目で見守った。周りの隊士たちも微笑ましそうに見ている。先日のマヨトマト事件とは訳が違う。今みおは全力で好きなものを食べているのだ。少女の笑顔につられて、皆の顔がほころぶのも無理はない。
「…だけどお前、その年齢でソレが好きって渋くねぇか?」
「むほ?ねばねば、おいしいよ?」
しゃかしゃかと幼児用の箸で器に入ったソレをかき混ぜる。
━━━━そう、納豆を。
初めて与えたのはいつだったか。過去に少し思いを巡らせてみる。しかし、納豆は朝ごはんに頻出の食材であり、ほぼ毎日出ていると言っても過言ではない。いつ与えたかなど明確に思い出せるものではなかった。
ただ、納豆を食べた途端に目を輝かせ、頬に出を当てたみおの顔は今でも思い出せる。ほっぺたが落ちそう、とはまさにこのことであった。
それ以来納豆だけは、思わず総悟が分け与えてしまうほどよく食べた。それはそれは美味しそうに食べた。
そして今も、みおはよく食べる。口いっぱいに納豆を頬張って満面の笑みをたたえている。
このままスナック菓子などに目覚めることなく育ってほしいものだ。
全ての食事をマヨネーズで埋め尽くす土方を尻目に、総悟は思った。