おもちゃのくるま


「みおー。あれ、いねぇのか?」

昼寝かな、と土方は思いつつ、総悟の部屋を開けた。やはりそこに彼女の姿はない。

「つーか、総悟もどこ行きやがった…。書類溜まって…、」
「いけぇみお!必殺・土方殺しEX!」
「とぉぉりゃぁぁぁ!」
「ぐはぁっ!?」

総悟の部屋を見渡してぼやいた時だった。まるでポケ○ンに指示をするかのような総悟の声がした直後、腰に強い衝撃を感じた。

「いけやせんぜ土方さぁん。武士たる者、常に周りに注意を巡らせておかねェと。」
「おかねェとー!」
「お、お前らっ…!」

上下運動が加わったEXは、土方の体を逆向きに「く」の字に曲げた。というよりは、ほぼ折ったと表現するのが近い。

「それで、みおに何の用だったんですかィ?」
「…くそっ、アレだよ。子ども用のおもちゃの車。みおの声を聞きつけた近所のおばちゃんから頂いたんだ。」
「くるまー!」

それを見るやいなや、みおはそれにまたがった。ハンドルをしっかり握って足で漕ぎ始める。

「これでぎんちゃーのとこに行きまさァ!」
「よーし、巡回行ってきやーす。」
「いっきやーす!」

後ろに付いているバーを持って、総悟は車を押した。一見すると親子である。

「あっ!総悟オメーは書類…!くそっ、この傷じゃあ追いかけれねぇ!」

土方は腰をさすりながら叫んだが、その声がふたりに届くことはなかった。




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