そとにでたい


「総悟!みおも、おそとに行ってみたい、でさァ!」

みおが真選組に住むようになってから早いもので、ひとつの季節がすぎるほどの時間が経った。屯所の中ではいつも走り回っていたみおも、そろそろ屯所を知り尽くして飽きてしまったらしい。総悟が巡回に行く時に玄関までとてとてと付いてきた。

「いけやせん。外は危ねぇから、いつもみたいにみおはお留守番でさァ。」

下駄箱から靴を取り出して履いた。みおは、
「あぶなくないもんー。こないだも、だいじょーぶだったでしょ!」
と、後ろで仁王立ちしている。総悟は立ち上がって振り返った。玄関の段差のおかげでいつもより縮まった身長差。みおは腰に手を当てて頬を膨らませている。

「こないだって…あー、ザキの運転で攘夷浪士のところに乗り込んだ時ですかィ?あれは特別でさァ。」
「とくべちゅっ…ちゅ、つ!とくべつ!じゃあ、きょうも!」

なおも食い下がるみお。総悟としては幼いみおをまた危険な目に遭わせたくないのだが、いつもはおとなしく「いってらっさー!」と言ってくれるみおがあまりにも頑固なので仕方なく折れることにした。みおの浴衣の裾を軽く引っ張って整えてやり、抱っこした。

「みお、屯所を出る時は?」

後頭部の寝癖を撫で付けて聞いた。いつも総悟が外出する時に言うセリフを聞いているはずだ。「いってらっしゃい」(と思われるもの)も言えるのだから、「いってきます」も言えるだろう。みおは歯を見せて笑った。

「んーとね、いたっきやす!」

ちがう、それは「いただきます」だ。総悟は歩きながら訂正をしたが、みおは理解するまでかなりの時間を要した。







「総悟!あれはなんでさァ?」

それから、あれも、あれもー!と小さな指が指すものはめまぐるしく変わっていく。はじめてゆっくり見る街中は、みおにとっては新鮮で楽しいものでしかなかった。総悟も気だるそうにしつつもひとつずつ答えてやっていた。

「そういやお前、浴衣しか持ってねェんでしたかィ?」
「ふぉ?ふくはこれだけだよー?」

ふと腕の中のみおに視線を落とすと、くたびれた浴衣が目に入った。やってきた時からほぼずっと同じ浴衣で過ごしているのだ。洗濯中のみ、小さくなった総悟の服を着ていた。淡い色合いの浴衣は、幼い子どもが着るには少し地味かもしれない。

「ついでだし、買い物しやすか。浴衣と着物と草履と…。他に何か欲しいものはありやすか?」
「ほしいもの!?うーん、うーーーーーん…。」
「…まァ、何か良さそうな物があったら言いなせェ。」

いつもの巡回ルートから少し外れたところにある呉服屋へと進路を変えた。みおは未だに唸りながら考えている。「ほれ、」と店の中が見えるように道の脇を歩いてやると、みおは腕から身を乗り出して店を見つめた。




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