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連載主とマルコ
2011/09/09 23:50
「見つけたよい」
「…」
木の根本でうずくまっていたチビ助は、おれの声に一瞬顔を上げかけたがすぐに伏せてしまった。これは完全に落ち込んでしまっている。
「ほら、日ももうじき暮れるから帰るよい」
「…」
「怒ってないから」
「…ほんと?」
「ほんとだよい」
「…マルコー…」
やっと上がったチビ助の顔は涙の跡や、どういうわけか泥までついてそりゃもう酷い顔をしていた。
それに苦笑しながらしゃがみ込み、服の袖でその顔を拭ってやる。
「…ごめんなさい」
「だから、別に怒ってないよい」
こうして街中ではぐれてしまったのは、おれのせいでもある。飯を買ってくるからと言って、チビ助を広場に置いていってしまった。
広場に戻って、チビ助の姿が忽然と消えていたのにはさすがに肝が冷えた。
それからずっと探し回って、やっと見つけた。
「立てるかい?」
「…うん」
のろのろと立ち上がるチビ助に違和感を覚えて、脚を見てみればちょっと擦りむいている。
「転んだのかい?」
「…」
「痛かったろ」
「へいきだもん」
「しかたない奴だよい」
ほら、と言って背を向ける。
「マルコ?」
「負ぶされよい」
「え?」
「おんぶしてやるよい」
背中に回した手をプラプラ振ると、遠慮がちに温もりが触れた。それをしっかりと抱えて立ち上がると、慌てたように首に細い腕が回された。
「しっかり掴まってろよい」
「う、うん!」
まるで重くない。
抱き抱えているときとはまた少し違った体重のかかりかたのせいだろうか、いつもよりずっと軽いチビ助に改めて申し訳なく思った。こんな小さな子供を一人にしてしまったのはやはりまずかったのだ。
「マルコ、たかい」
「そうかい?」
「マルコ、ごめんね」
「ああ。おれこそ、一人にして悪かったよい」
「マルコ、ありがと」
すり、と頬に柔らかい髪が触れる。
「無事でよかったよい」
小さな頭になるたけ優しく頭を寄せて、背中の温度にそっと微笑んだ。
たしか、ほ〇までっかでだっこよりおんぶがいいって言ってたから…
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