クリスマスに社長とドキドキ初エッチ

 12月25日。
 クリスマスのイルミネーションが光り輝く東京の街中で、俺はある人を待っていた。恋人でも、友人でもない。出会い系サイトで知り合って、今日初めて会う人だ。年齢は、俺より28歳上の48歳。どこまで本当か知らないが、独身で、子供向けの玩具を売る、小さな会社の社長をしているらしい。
 クリスマスにひとりきりは寂しいから、誰かと過ごしたいのだ、と、その人は言っていた。それは俺も同じだった。恋人はいないし、友人はみんな家族や恋人と過ごすらしい。一人暮らしの寂しさを、滲むように強く感じる季節だった。

「あ、えっと、……君がユウくんかな?」

 サイトの登録名で名前を呼ばれて、顔を上げると俺よりも少し背の低い男の人が目の前に立っていた。白髪混じりの黒髪で、不潔ではないくらいの口髭を生やしていて、黒縁の眼鏡をかけ、グレーのスーツを着ている。48歳という年齢にしては若く見えたが、別段かっこよくはなかった。

「誠さん?」

 サイトで聞いていたユーザーネームを口にすると、その人は心底安心したような顔でため息をついた。

「そう、僕が誠です。お待たせしてごめんなさい」
「いえ……、あ、あの、よ、よろしく、お願いします」
「こちらこそ」

 誠さんは、ディナーを予約してくれていた。
 店は、サロンやブティック、オフィスなどが入った綺麗なビルの5階にある、フレンチレストランだった。どの席にも上品な客が座っていて、そのほとんどが、男女の二人組だった。
 ドレスコードを気にして、ジャケットを着ていて良かった、と思った。普段の、大学へ行くときの服装で入ったら、きっと入店を断られてしまう。

「素敵な店、ですね」

 窓際の席を案内され、驚きながら俺は誠さんにそう言った。窓からは、宝石箱の中のように煌めく東京の街が見えた。

「僕のお気に入りの店なんだ」
「へ、へえ……」

 俺は、少し引け目を感じていた。そこは、親の仕送りとバイト代でどうにか過ごしている大学生が踏み込んではいけない領域のような気がした。

「ユウくん、どうしたの? 大丈夫?」
「えっ。え、あ、ああ……、あの、こんな素敵な店、入ったことなくて……」

 言いながら、顔を下に向ける。

「その、緊張……、して、ます」
「そうか、……ごめんね。ユウくんをもてなしたくて、つい張り切っちゃったんだ」

 照れ臭そうに誠さんは言った。大人の男性の優雅さの中に、子供のような純粋さを見たようで、俺は少しときめいてしまった。

「い、いえ、謝らないでください。とっても嬉しいんです。ただ、その……」
「何かな?」
「えっと、……テーブルマナー、教えてくれませんか?」

 食事が来る前に、誠さんはこっそりと俺に簡単なテーブルマナーを教えてくれた。ただ最後に、いちばん大事なのは食事を楽しむことだよ、と、笑って付け足した。
 実際、食事は美味しかった。誠さんのおかげで戸惑うこともなかったし、食事中にマナーを指摘されるなんてこともなかった。
 支払いも、俺がトイレに立っている間に誠さんが全部済ませてくれた。あとからお金を請求されることもなかった。
 ただ、やはりずっと緊張していたせいなのか、店を出ると、ドッと疲れが襲ってきた。誠さんは、そんな俺を心配してか、カジュアルなチェーンのカフェに案内してくれた。

「えと、……さっきは、ごちそうさまでした」

 温かいキャラメル・マキアートを飲みながら、俺は誠さんを見つめてそう言った。このキャラメル・マキアートも、誠さんがクレジットカードで払ってくれたものだった。

「美味しく食べられた?」
「はい。すごく……、良い、体験でした」

 上手い言葉が思いつかなかった。誠さんは、微笑みながらブレンドコーヒーを啜った。改めて明るい空間で見てみると、上品な人だな、と思う。社長というのは、きっと本当なのだろう。

「ユウくんが喜んでくれて良かった」
「えへ。ありがとうございます」

 座ったままで軽くお辞儀をすると、誠さんも軽いお辞儀を返してくれた。

「これから、どうする? ショッピングでも行こうか。欲しいものあったら買うよ」
「い、いえ、そんな、悪いですよ」

 財布もカバンもアクセサリーも服も、欲しいものならいくらでもあったけれど、誠さんは本当に何でも買ってくれそうな感じがしたから、申し訳なくて俺は断った。クリスマスを一緒に過ごしてくれて、ディナーまで奢ってくれて、それでもうプレゼントは貰えているようなものだ。

「じゃあ、えーと……」

 誠さんは、少し恥ずかしそうに俺のほうを見た。

「僕の家、来る?」

 心臓が、どきん、と分かりやすく跳ねた。
 出会い系サイトで知り合った人の家に行くということが、何を意味するのかは知っている。
 期待と緊張と恐怖が、胸の奥をぐるぐると回る。
 でも、誠さんなら、と思っている自分がいた。優しくて少しお茶目で、俺のことを可愛がってくれてお金も持っている誠さんは、俺にとって、とても魅力的な男性だった。

「い、行きたい、です」
「本当にいいの?」

 誠さんが目を輝かせる。

「はい、……連れて行って、くれますか?」
「勿論だよ。あー、嬉しい」

 そう言って笑う誠さんは、まるで少年のようだった。でも、その中にはやはり、大人の色気が見え隠れしていた。
 誠さんは店の前までタクシーを手配してくれたので、それで家まで向かった。
 誠さんの家は、背の高いマンションの真ん中の階にあった。そして、それはホテルのスイートルームのように広く、美しく、整っていた。リビングにはソファとローテーブル、大きなキッチンカウンターがあり、奥には、おそらく寝室へと繋がるのだろう扉がある。少し大きめの窓からは、青々とした美しい東京の街が見えた。まるで甘い夢を見ているみたいだった。

「誰かを家に入れるのは久しぶりだな」

 言いながら、誠さんは着ていたコートをハンガーにかけた。俺が上着とジャケットを脱ぐと、それも自然な仕草で受け取り、隣に並べてくれた。

「ソファでも座ってゆっくりしてて。お酒はまだ飲めそう?」

 素直にソファに腰掛ける。
 すでに店でシャンパンとワインを飲んでいたが、食後のコーヒーとキャラメル・マキアートのおかげか、酔いはすっかり覚めていた。

「まだ飲めます」
「シャンパンでいい?」
「はい」

 誠さんは細長いグラスに淡い黄色のシャンパンを注ぎ、白い皿にミックスナッツを入れると、それらをローテーブルに置いて俺の隣に座った。

「乾杯」

 お互い、グラスを掲げてから口をつける。
 シャンパンは別段好きではなかったが、それは思ったよりもクセが少なく、フルーティーで飲みやすかった。美味しいです、と言うと、誠さんは、心底嬉しそうに笑ってくれた。

「ユウくんって、本名もユウなの?」

 ミックスナッツに手をつけながら誠さんが尋ねる。

「あの、ユウトって言います。悠久の悠に人で悠人です」
「僕も悠人って呼んでもいいかな」
「はい。えと……、誠さんは」
「僕は本名なんだ」
「じゃあ、誠さん、で、いいですか?」
「うん、そう呼んでくれると嬉しいな」

 誠さんは照れ臭そうに笑って、俺の頭を撫ぜた。背の高い俺は、頭を撫ぜられることに慣れていなかった。恥ずかしくなってため息をつくと、誠さんは優しく目を合わせてくれた。

「悠人はかっこいいね」
「そ、そんなことないです」

 嘘をついた。自分の顔がかっこいいことなど、20年生きていたらイヤでも分かる。

「本当にかっこいいよ」
「あ、ありがとう、ございます……」

 呟くようにそう言ってから、勇気を出して誠さんの頬にキスをした。誠さんは、少し驚いた顔をして、それから、嬉しそうに微笑んだ。拒まれないことが嬉しかった。もう一度勇気を出して、今度は唇を近づける。くどくない、さっぱりとした香水の匂いが鼻をくすぐった。
 ゆっくりと唇を重ねると、体の奥がゾクゾクするような心地がした。媚びたような甘いため息が自然と漏れる。誠さんは優しい目で俺を見つめて、それからぎゅっと抱きしめてくれた。

「いいの?」

 言葉の代わりに頷く。胸がドキドキと激しく高鳴る。今日会った人と体を重ねたいと思うなんて、初めてのことだった。それどころか、俺は今までひとりとしかセックスをしたことがなかった。冬の寒さと寂しさが、俺を大胆にしているのかもしれない。
 誠さんは手を伸ばして、ローテーブルに置かれていたリモコンのスイッチを押した。暖房が、ピピッ、と軽快な音を立てる。暖房の温度を上げたのだろうと俺は思った。さりげないその仕草の中に大人の色気を感じて、俺の体はさらに昂った。

「シャワー、浴びておいで」
「はい……」

 俺の声は、甘ったるく蕩けていた。
 迷いながら浴室に辿り着いて、高鳴る胸を抑えながらシャワーを浴びた。
 本当は心のどこかで、こうなることが分かっていた。そうでなければ、家を出る前に陰毛を整えたり、尻を洗浄したりはしないはずだった。準備万端になった自分の体を鏡で見つめて、俺は恥ずかしくなった。
 少し悩んでから、下着だけを履いて俺はリビングルームへ戻った。脱いだ服は畳んで、持ってきたカバンの中に入れた。

「あの、えっと、もど、り、ました」

 ソファに腰掛けて、スマートフォンを弄っていた誠さんに声をかける。誠さんは俺の姿を見て、小さなため息をついた。俺の裸に欲情しているのだと思うと、嬉しくなってしまう自分がいた。

「じゃっ、じゃあ、僕もシャワー浴びてくるね」
「は、はい……、あの、えっと」
「ちょっと待っててね。テレビとか、好きにつけていいからね」

 テレビをつける気にはならなかった。スマートフォンを開いたが、通知欄には何もなかった。だから俺は、頭に入らないネットニュースをぼーっと見る時間を過ごした。

「悠人、お待たせ」

 悠久にも思えたその時間は、誠さんの低い声でぷつん、と途切れた。誠さんは腰にタオルを巻いただけの格好だった。少し出たお腹が、ぽっこりとその白いタオルの上に乗っていた。おじさんの裸だった。それなのに、俺はその裸を、愛おしく思った。

「誠さん」

 名前を呼んで、俺は誠さんの体に抱き着いた。温かい体に安心したし、興奮もした。もう一度キスをすると、唇を割って、誠さんの舌が入り込んできた。

「ん、ん、ん゛。ん、あぁ……」

 鼻からいやらしい声が漏れ出る。久しぶりのキスに、体が蕩けそうだった。

「ベッド、行こうか」
「は、はふ、は、はい……」

 寝室にも、既に暖房がつけてあった。誠さんの寝室には、大きなベッドと小さな観葉植物が置いてあった。リビングと同じで、まるでホテルの部屋のようだった。
 ベッドの上に乗って、再びキスをする。誠さんの舌に自分の舌を絡ませると、気持ち良くて堪らなかった。俺はもう、勃起していた。

「可愛いよ、悠人……」
「あ、ああ、はぅん……」

 誠さんの舌は、俺の舌から耳朶へと移った。温かくて心地良い。

「はふ、ん゛、んん……。あ、あ、あぁっ」
「敏感だね……、すごいやらしいよ……」
「は、恥ずかしい……。やぁっ、あ、あ、あぁん」

 耳から首筋、鎖骨へと、誠さんの舌が這う。自分の口から漏れる、甘ったるい声にゾクゾクする。こんな声が自分の口から発せられているなんて、嘘みたいだった。

「あ、あ、ま、誠、さ、あ、あ……、あ、あっ」

 誠さんの舌は、さらに下りて乳首へと移った。敏感なそこを温かい舌で舐められると、気持ち良さに腹が重たく疼く。耐えきれずに腰を軽く揺らすと、誠さんは微笑んで俺のペニスを下着越しに撫ぜた。

「もう大きくなってるね……」
「あ、あ、やっ、んん、ん……」

 丁寧に下着を下ろされる。ぶるん、と勃起したペニスが跳ね出る。誠さんは俺のペニスをまじまじと見つめて、それから優しく扱き始めた。慣れた手つきだった。

「あぁっ、あ、あ、やっ、ん、ん、あ、あ……」
「ふふっ。いっぱい声出ちゃうね」
「ご、ごめんなさい……」
「謝らなくていいんだよ。すごく可愛いよ……」

 先端からトロトロと我慢汁が垂れて、誠さんの手を汚していく。誠さんはペニスを扱きながら、俺に優しいキスをしてくれた。それがすごく気持ち良くて、体がきゅん、と切なくなった。もっと誠さんが欲しい。わがままな自分が頭を擡げていた。
 きっと誠さんは拒まないだろう、と、自分に言い聞かせながら徐に脚を開く。普段は誰にも見せることのない、睾丸も、尻穴も、全てが曝け出される。優しげな誠さんの顔に、胸がギュッ、となる。

「ここも弄って欲しいの?」

 誠さんの指が、俺の尻穴をそっと撫ぜる。

「い、……弄って、欲しい、です。綺麗にしてきたから、その、……お願い、します……」
「そうなの? ふふふ。じゃあ、弄ってあげないと可哀想だね」

 そう言うと誠さんは、ベッドの側の戸棚を開け、パックに入ったローションを取り出した。
 封を開けて、手のひらにローションを垂らすと、誠さんは再び俺の尻穴に指を這わせた。優しく撫ぜて、慣れてきたところにゆっくりと力を入れると、するりと指が入り込む。圧迫感とぞわぞわするような淡い快感に、体が震えた。

「すぐ入っちゃうね……、お尻好きなんだ」
「すき、すきぃ……」

 アナルセックスの経験はなかったが、オナニーのときにアヌスを弄るのは大好きだった。玩具も使っている。

「可愛いね。いっぱい弄ってあげるね」
「う、うん、いっぱい、弄ってください……」

 誠さんの指の動きは、繊細で優しくて丁寧だった。それから、指で愛撫している間も、何度もキスをしてくれた。
 俺はもう、完全に誠さんの虜だった。
 入れる指を少しずつ増やされて、その度に快楽が増幅していくような感じがした。誠さんの太い指が三本入る頃には、既に俺はぐずぐずに蕩けてしまっていた。

「すごい広がっちゃったね……。悠人のお尻はエッチだね」
「あっ、あ、あ、ん、ん……、み、見ないで……」

 電気を消していないことに、今更ながら気が付いた。恥ずかしくて脚を閉じたくなったが、誠さんの視線を感じると何だか興奮してしまう自分がいた。見ないで、と言いながら、その実、もっと見てほしかった。

「可愛いよ、悠人……」
「あ、あぁん……。ま、誠、さん……、ん、んん」

 重ねるだけのキスをされて、胸が熱くなる。もっと愛されたい、とわがままな体が疼くのを感じる。今夜はとても寒いからかもしれない。
 誠さんは俺の頬を指でなぞり、おでこにキスをすると、ようやく腰に巻いていたタオルを外した。年齢を感じさせないほど激しく隆起したペニスに、俺の胸はさらに熱くなった。いやらしい……、と思うけれど、もう止められなかった。

「舐めてもいい……?」

 掠れた声は淫靡に酔ったものだった。誠さんは言葉の代わりに、優しく俺の髪を撫ぜた。
 フェラチオをするのは初めてだった。それどころか、俺は、男とセックスをするのさえ今日が初めてだった。一度だけ経験したセックスの相手は女の子で、彼女はそのとき付き合っていた恋人だった。他にも付き合った人は男女ともにいたが、結局セックスはせずに終わっていた。
 じくじくと疼く体でベッドの上を這い、勃起したペニスを口にふくむ。自分が男のペニスをしゃぶっている、という事実に興奮した。青臭い匂いも、舌に伝わる熱も塩味もたまらなかった。

「ん、んん、やばい……、おれ、チンコ舐めてる……」
「そうだよ。悠人、良い子だね。すごく気持ち良いよ……」
「あ……、あふ、んんん」

 俺のフェラチオは辿々しいものだったはずだが、それを気持ち良い、と言ってもらえるのは、お世辞でも嬉しかった。誠さんは、ペニスをしゃぶる俺の髪を何度も撫ぜてくれた。

「はぁ、悠人……、すごくいいよ。たまらないよ」
「むふ、ん、んんんん……。ん、あぁん……」

 たっぷりとペニスをしゃぶって満足すると、俺は膝立ちになって、誠さんの体に抱き着いた。それだけで誠さんは、次に俺が何をして欲しいのか分かったようだった。先程のローションが入っていた戸棚から、今度はコンドームを引っ張り出す。初めての経験に、俺は素直な喜びを感じていた。

「入れてもいい?」

 甘ったるい声でそう尋ねられる。

「は、はい、……優しく、して、ください……」
「もちろんだよ。優しくするからね……」

 言いながら、誠さんは自分のペニスをしごき、コンドームを装着した。慣れた手つきだった。
 ベッドの上に寝転がって、恥ずかしかったけれど、自分から脚を開く。誠さんは優しく笑いながら俺の髪を優しく撫ぜ、ゴムを装着したペニスにたっぷりとローションを塗って、亀頭を、俺のアヌスへと押し当てた。
 ゆっくりと、力が加えられる。誠さんは、ふう、ふう、と、興奮を吐き出すように息をしながら、俺の体に近づいた。

「きついな」

 零すように誠さんが呟く。

「ご、ごめんなさい」
「そんな、謝る必要なんてないんだよ。ただ、悠人が傷付かないか、心配しただけなんだ」
「う、うん……、お、俺、後ろ、初めて、だから、その……」
「初めてなの? じゃあ、尚更優しくしてあげなきゃね……」

 そのとき、誠さんの目が光ったのを俺は見逃さなかった。
 誠さんは、ローションをさらに継ぎ足して、ゆっくりと、時間をかけながら腰を進めていった。痛みはなかった。圧迫感と、じわじわと湧いてくる快感が、俺の体を擽る。

「あっ、あ、あ、あぁん……」
「気持ちいの?」
「きもちい……。ん、もっと、ぎゅう……」
「可愛いね……」

 誠さんは俺をぎゅっ、と抱き締めてくれた。ペニスが、さらに奥へと入り込んでいく。

「あっ、あ、あ! あぁんっ。ん゛あぁっ!」
「悠人、全部入ったよ……」
「あぁ……、ん、んんんっ、はうぅ」

 唇を重ね、舌と舌を絡ませ合う。溶け出すような心地に、体が震えた。もっと快感が欲しくて、さらに深いキスをすると、誠さんの低く、興奮したような声が、俺の耳を刺激した。

「動いてもいい?」

 俺は殆ど何も考えずにコクコクと頷いた。すると、すぐに誠さんは腰を重たげに動かした。

「あぁっ!」
「苦しくない? イヤだったらすぐに言うんだよ」
「うん、あぁっ、ああ、気持ち良い……」
「それは良かった」
「あっ、あぁあ、ん゛っ、いや、あ、あぁあぁんっ」

 誠さんの愛撫は、オナニーをするときよりもずっと気持ち良かった。ゾクゾクするような快感を放出するようにキスをねだると、誠さんはそのようにしてくれた。
 この人は、今まで何人の男をこうして抱いてきたのだろう。
 そう思ったが、それ以上のことは考えないようにした。

「あ、あぁん……。誠さん、もっと、もっとぉっ……」

 快感を感じるごとに、俺は淫らに、そしてわがままになっていった。誠さんに、もっと可愛く、いやらしく、そして魅力的に思われたかった。激しく腰を擦り付けると、誠さんは俺のおでこにキスをしてくれた。

「自分から動いて、悠人はすごくいやらしいんだね」
「あ、ん、んんん゛……」
「いやらしくてすごく可愛いよ……」
「ん゛っ、んんん、あ、あ、ん、ん゛んんんっ……」

 優しい声と体で甘やかされて、もう、体が溶けていきそうだった。何度もキスをして、その、逞しいとは言えないくたびれた体にしがみつく。じんじんと痺れるような欲望が俺の体を蛇のように這う。

「誠さん、あぁ、あ、あ、だめ、もう、いっちゃう、いっちゃいそうですっ……」

 玩具にアヌスでの絶頂を覚えさせられていた俺は、もうすぐそこに限界を見ていた。誠さんは嬉しそうに、激しく腰を揺らしている。

「あ、あ、あ、あっ、あ、あ、ん゛、ん゛っ! ん゛、んん、ん、いく、いく、だめ、あ、あ、あぁあっ」
「いいんだよ、ほら、気持ち良くなってるとこ、僕に見せてごらん……」
「はうぅっ……! いく、いっちゃっ、いっちゃうっ、あ、あ、いやっ、あ、あ、あ、お、お、ん゛っ……。ん゛くぅうぅうぅうっ!」

 激しい快感が俺の体を襲う。誠さんはそんな俺を抱き締め、また、おでこに優しいキスをくれた。

「ん゛ぅう……、あぁあ……、ん゛、んんん」
「気持ち良かった? 顔、とろとろだね……」
「うん、気持ちいの……。ん、んんん、きすして……」

 俺がねだると、誠さんは今度は唇にキスをしてくれた。すぐに舌が入り込んでくる。応えるように舌を絡ませると、ぞくぞくするような快感が体を駆け巡った。

「あ、あ、あぁあ、あぁ、気持ち良い……。もっと、もっとちゅー、いっぱいしてぇ……」
「あぁ、可愛い……」
「ん゛、あ、ん゛んんんっ」

 キスをされて、再び奥を突かれる。本当に40代後半なのか、と一瞬驚いたが、そんなことを考えている余裕はすぐになくなった。絶頂したばかりのアヌスを太いペニスで貫かれているのだ。

「ふぁっ、あ、あ、あ、ん゛、んんっ、だめっ、もうだめ、誠さん、いやっ、いやぁっ」
「イヤそうに見えないよ。気持ち良いんだね?」

 誠さんの動きがさらに激しくなる。

「ん゛あぁあっ、あ、あっ、だめぇっ……。おっきぃの、そんな、したら、感じちゃうぅう……」
「そんなこと言われたら、余計に張り切っちゃうよ」
「あ、あぁあっ、ん゛ぅうっ。ん゛っ、あ、あ、あっ、すごいっ、あ、あ、待って、だめ、またいく、いっちゃうぅっ!」

 体を動かして快楽から逃げようとするのを、抱き締めて繋ぎ止められる。見つめた誠さんの顔付きは欲望をはらんだ男のもので、それにときめいてしまう自分を止められなかった。

「いっちゃう、いく、あ、あ、もう、あ、あっ……、いくっ……! んっ、あ、あ、あ、ん゛あぁぁああんっ!」
「またいっちゃったんだ……? 可愛いよ……」

 そう言うと、誠さんは俺の耳に口を寄せた。

「僕もいっていい?」

 ぞくっ、と、腹に甘い痺れを覚える。

「ふん゛ん、いって。いってほしい……」
「すぐいくからね……、ちょっとガマンしてね……」

 そう言うと、誠さんは俺を抱き締め、小刻みに腰を揺らし始めた。絶頂したばかりの体には少しつらかったが、それよりも興奮が優った。
 俺の体で、誠さんが気持ち良くなっている。
 そう思うと、ぞくぞくして、たまらなくなってしまうのだ。

「あぁっ……、悠人、すごく気持ち良いよ……。すぐにいっちゃいそうだよ……」
「ん゛、んんっ、いって……、いっぱい、気持ち良くなってぇ……」
「あー、いくっ、……うぅっ……」

 びくびくっ、と、誠さんのペニスが俺の中で震える。
 誠さんが射精している。
 胸の奥が、じんわりと熱くなるのを感じる。
 唇を寄せると、誠さんは少し乱暴に俺にキスをしてくれた。

「うぅっ、……ふぅ……」
「ん゛ー……」
「はぁあ……」

 何度か体を震わせてから、誠さんは腰を引いた。コンドームには、たっぷりと精液が溜まっていた。誠さんは少し照れ臭そうに笑ってそれを外すと、ティッシュにくるんでゴミ箱に捨てた。

「悠人、ありがとう。気持ち良かったよ」
「ん゛ぁ……」
「いっぱい汗かいちゃったね……。少し休んだらお風呂入ろっか」

 そう言うと、誠さんは頬にキスをしてくれた。
 しばらく布団の上で体を落ち着かせてから、あの広い浴室へと向かった。俺が休んでいる間に、誠さんはお風呂のお湯を溜めてくれていた。なんだか気恥ずかしいような気がしたが、シャワーで汗を流してから、誠さんとふたりで湯船に浸かった。こうして見ると、誠さんは上品な紳士で、それでも、やっぱりおじさんだった。

「悠人、こっちおいで」
「あ、……んんっ」

 後ろから抱き締められるような体勢になる。なんだか恋人同士のような感じがして気恥ずかしかったが、俺は誠さんのされるがままになった。柔らかいペニスが、尻に当たっていた。

「あの……、今日は、すごく良い夜だったよ。ありがとう、悠人」
「お、俺も……、すごく、良かった、です」

 お互い、言葉が辿々しかった。

「えっと……、その、悠人が良かったら……、なんだけど……、また会ってくれないかな?」

 そう囁くと、誠さんは俺の体をぎゅっ、と強く抱き締めた。
 胸がきゅっ、と苦しくなるのが分かった。悪い心地ではない。

「は、……はい、俺も、また会いたい、です」
「ほんとう?」

 誠さんは嬉しそうに言った。少年のような口吻を愛おしく思った。

「はい。あの、またいっぱい気持ちよくしてください……」
「もちろんだよ……。いっぱい、気持ち良いことしようね」

 日付は、もう26日になっていた。
 今、俺を包んでいる温もりが聖夜の幻ではないことに喜びを感じながら、俺は誠さんの胸にそっと顔を寄せた。




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