オレのアントワネット・3





ソファーからダイニングに移動して、腕組みに仁王立ちで沈黙しているサニー。
そんなサニーの様子に渋々キッチンに入ったナマエ。不満たらたらの視線でサニーの様子を窺い、口を尖らせた。

「サニーは絶対まずいって言うよ」
「良いから黙って作れ」
「だって自信ないよー」
「卵くらい焼けんだろ」
「焼けるけどさー」
「何だし」
「どうやって四角くするの?」
「四角って・・・」

サニーはため息をついた。

「厚焼きを言ってんのか」
「うん」
「できんのか?」
「だからどうやって四角く?」
「・・・スクランブルで良だろ」
「スクランブル?」
「かき回す!」
「ああ、あれね!」

サニーは二度目のため息をついた。

「あと何がある?」
「お肉と野菜」
「肉の種類は?」
「えーっと・・・・・・」
「・・・野菜は?」
「キャベツと人参と・・・緑中心に赤いのとか黄色いのとか」
「・・・・・・」

サニーは大きくため息をついた。

「とりあえず野菜を炒めるし」
「このまま?」
「普通は洗って切るけどな?!」
「だよねー」
「・・・・・・」
「えーっと包丁どこだっけ」
「・・・・・・」
「ん?キャベツってどこまで皮?」
(キャベツの皮だと・・・?!)

いよいよ我慢の限界と言ったサニーだった。サニーの頭上では髪がいつの間にか拳を握っていた。それをぐっと堪え、もたついているナマエの代わりにサニーは己が髪を翻した。
空中に舞い上がった野菜が一斉に細かくなり、そして余す事無くボウルに収まる。

「ふぇっ?!」
「とっとと洗え」
「今の何?」
「ヘアカッター」
「ヘア・・・」
「最高にビューティーだろ。オレの髪は」
「・・・」
「何だし?」
「・・・ちゃんと洗ってる?」
「え?」
「髪の毛」
「汚なくねーし!」
「だって髪の毛だよ」
「切ったのは触覚でだ!」
「ヘアカッターって言ったじゃん!」
「そこツッコむか?!」
「それに触覚って虫にしか無いよね?!」
「やかましいっ!!」


◇◇◇◇◇

※後日、ココ宅にて


「・・・ったく!マジで腹立つし!」
「・・・・・・」
「・・・んだよこの毒」
「いや・・・やっぱり何か違ってないか」
「何が?」
「何がって・・・何処から言えば良い?」
「・・・」
「・・・」
「・・・・・・」



◇◇◇◇◇





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