何で? 私、何で泣いているの? 何がそんなに悲しいの? それから……何を書いているの? 思い出せない。 何で? 何で? 私、いつまで泣くの? 何がそんなに怖いの? まだ、何か書くの? …『さ』? 『さ』『よう』『なら』 さようなら?!誰と?! ココさんと?! 嘘。 どうして?! …嫌。 嫌だ。 誰? 怖い。 私を、連れて行かないで。 助けて。 怖い。 誰か。 助けて。 ココさん。 助けて。 ココさん。 ココ、さん。 「蒼衣!」 激しく身体を揺さぶられて、蒼衣は覚醒した。 体中から汗が噴き出していた。 呼吸が荒い。 大きく開かれた瞳から、涙が幾筋も流れていた。 何か言おうとする唇と、何か掴もうとする指が止まる事無く戦慄いていた。 「蒼衣!」 もう一度呼ばれた声に、蒼衣の目の焦点がゆっくりと合う。 それと同時に、自身がココにしっかりと抱えられている事を知った。 「…ココさん……」 「蒼衣!大丈夫か?!しっかりして!」 血の気の無くなったココの顔を映した蒼衣の目から、もう一筋、涙が頬を伝う。 身体を包む温かい腕に、ついさっきまで蒼衣を支配していた恐怖がすうっと溶けて消えていった。 「助けに来て、くれたんだ……」 涙が溢れた蒼衣の視界が、白く霞む。 誰かが何かを叫んでいる声が、蒼衣の身体の中、遥か遠くの方で聞こえた。 ← → |