「……つーかよ、サニー。お前うろたえすぎだ」 トリコはベッドに仰向けになり、視線を宙に漂わせながら言った。 夜もすっかり更け、5人で過ごす楽しい時間も終わりとなった今。 ココは自分の寝室に、トリコはサニーといつもの通り来客用の寝室にいた。 もう一つ向こうの部屋では、今頃リンと蒼衣が気持ち良い寝息を立てている頃だろう。 「うろたえてたのはリコじゃねーかよ。リン相手に」 隣のベッドからサニーが返した。 「オレは冗談言ってるんじゃねーよ」 トリコの淡々とした声が響く。 「…、かってるし。レらしくね」 サニーは素直に返した。トリコがサニーの様子を伺うと、トリコと同じように真上を見つめていた。 「ココの奴、記憶がどーとか急に言い出すから」 「…確かにヒヤッとはした」 「………レたちの気も知らねーで」 「サニー…」 「や、今の無し。、れはそれで良!」 サニーはタオルケットを勢い良く蹴り上げてトリコから背を向けた。 「ココが幸せならそれで良」 「幸せ、か…」 トリコは溜め息をついた。 「その幸せに嘘を重ねていったら、…いつか必ずボロが出る。だからオレ達は、最低限の嘘しかつかない方が良い」 「……何?」 サニーは身体をもたげ、トリコを見た。 「リンだよ」 「リン?」 「ココはオレたちの言葉を、蒼衣の処置の『間』ずっとリンが付いていると解釈したはずだ」 「あ……」 「実際は違う。処置の『後』だ」 サニーは黙って聞いていた。 「ココがリンに何か聞き出そうとする前に、手札を揃える」 「……わかった」 サニーは小さく息を吐いて、ベッドに横になった。 「正直オレは、ココがリンに耳打ちした時、やられたと思った」 「風呂上りの?」 「あぁ。ココの事だから、『処置の内容を聞きたい』だと思った」 「………」 「違っていてホッとした」 そう言うとトリコは大きな欠伸をした。室内の緊張が解れ、サニーはふふっと鼻で笑った。 「…うろたえたの間違いじゃね?」 「うるせーよ」 月明かりの中、「全く、兄妹そろって…」と言う呟きが聞こえた。 「、んか言ったか?」 「…オレはココじゃねぇって言った」 「え?」 「だから、ココの真似は出来ねぇって事」 「え?」 「サニーお前、わざと聞いてるだろ?」 もう寝るわ!と言ってタオルケットを引き上げたトリコの様子に、サニーは小さく「だっさ」と呟いた。 暫くの沈黙の後、サニーが口を開いた。 「リコ、覚えてるか?」 「え?」 「今日の蒼衣が、『何人目』か」 「…忘れた。……サニーは?」 サニーは大きく息を吸った。 「…も、とっくに数えてねーし」 「…そうか」 「リンもやめたって言ってたし」 「…そうだよな」 サニーは舌打ちして吐き捨てるように言った。 「IGOのやつら、んなにあちこちいじっといて、全然長持ちしねぇし」 「………徐々に延びてはいる」 「んなの、分かってるし」 サニーはタオルケットを頭から被った。 「……これが、最後になると良いし」 「………おぅ」 祈るか。神というものに。 オレたちの冒涜を、赦してくれる神が存在するならば。 魂の一つくらい、くれてやる。 二人は目を閉じた。 to be Continued. ← |